ファスナー界のリーダー「YKK」のテクノロジー【後編】ファスナーとサステナビリティ
服・バッグ・ブーツなどあらゆるファッションアイテムにつけられている「ファスナー」または「ジッパー」。テントから自動車のシートまで「何かを包む」道具を成立させるために必須のパーツである。 その市場において絶対的と言える地位を築いている企業が「YKK」だ。年間300万km以上のファスナーを生産し、スナップ&ボタン・面ファスナーなどの「留め/外し=ファスニング」商品全般を含めると、商品総数は10万種類以上。 本記事ではYKK「テクノロジー・イノベーションセンター」の協力を得て、目立たない存在でありながらファッションに欠かせないファスナーに隠された技術の一端を取材した。 【前編】ではファスナーならではの品質要素「摺動(しゅうどう)感=ファスナーを開け閉めする際の引き心地」に焦点を当てた。そこには「触感をデザインする」ためのユニークな技術があった。 【後編】は近年ファッション業界でも大きな課題となっている「サステナビリティ」について。エシカルを掲げる新興ブランドや自然派のアウトドアブランドだけでなく、LVMH・ケリング・プラダなどの巨人が続々とリアルファーからの脱却やサプライチェーンにおけるカーボンニュートラルを進めていることからもわかる通り、持続可能性への取り組みはラグジュアリーの必須条件でもあるようだ。 では、ファスナーにおいてはどうだろうか? 本記事では特に「資源循環=リサイクル」について取材。ペットボトルや紙製品ではもはや当たり前になっているリサイクルだが、ファスナーというパーツを通して考えるとまったく違う世界が見えてくるという。 同社・嶌田和彦さんに話を聞いた。
再生材という「未知」の素材
ファスナーは、分解すると3つのパーツからなっている。手で持って動かす部分「スライダー」、噛み合う歯の部分「エレメント」、そして生地へ取り付ける際に縫製するなどの部分「テープ」である。 各部の素材は銅や亜鉛、ポリエステルなどからなり、複数の素材が組み合わされている場合がほとんどだ。