15歳久保健英の凄さと天才ゆえの宿題とは?
ゴールへ向けて一直線にドリブルを仕掛ける。どんどん加速していく体勢でも、15歳の逸材・久保建英は右斜め後方から迫ってくる相手選手の存在をしっかりと把握していた。 北海道コンサドーレ札幌を1‐0で下した、3日のYBCルヴァンカップ予選リーグ第4節。FC東京のトップ下として、後半21分から味の素スタジアムのピッチに立った久保建英(FC東京U‐18)が、15歳10ヶ月29日でトップチームでの公式戦デビューを果たした。 ピッチに足を踏み入れる前から大きな拍手で出迎えられ、応援歌に乗って「タケフサ」と名前も連呼された久保が才能の片鱗を魅せたのは39分。自らのドリブル突破からMF前寛之のファウルを誘い、ゴールまで約20メートルの地点で直接FKのチャンスを獲得した場面だ。 センターサークル内にいたMF阿部拓馬が、相手のミスパスを拾う。縦パスを受けた久保は右足でのトラップから時計回りに体を反転させて前を向き、「小さなころから大好き」と公言してはばからないドリブルを開始する。 「あそこで仕掛けなかったら、フォワードじゃないと思っているので」 前方にFWピーター・ウタカ、左にはフリーのMF東慶悟が走っていたが、久保にパスを選択する気配はない。思考回路はこれからの数秒間に起こりうる、すべての状況を弾き出していた。 実は体を反転させたときに、前の存在をとらえていた。ファイターを自認する21歳のボランチの表情や視線を介して、次にどのようなプレーをしてくるのかが予測できたのだろう。果たして、前は久保の左側から右側へ、死角に潜り込むようなコースで必死に追走してきた。 「(前選手が)来ているのはわかっていましたし、あの場面では『あっ、倒れされる』とも感じていたんですけど。どうせ倒されるのならばシュートを打とうと思って、実際に打った瞬間に体を当てられたので、けがをしないようにコケました。ファウルをもらえてよかったです」 インパクトの刹那に、前の強烈なタックルを食らった。それでも利き足である左足のインサイドでボールをしっかりミート。強めの弾道を相手GK金山隼樹の正面に飛ばす。左右どちらかへ突き刺せばそのまま認められるし、外しても直接FKのチャンスが転がり込む。 素早く次の展開を読む洞察力と相手の存在を俯瞰できる空間把握能力が、ファウルで止められるかもしれないと告げていた。不意を突かれたものではないから心身の準備も整い、弾き飛ばされても空中で体を巧みに回転させて、背中からピッチに落ちて事なきを得る。ゆえに足首やひざなどを痛めることもない。