「32年あっという間」若田さんJAXA退職、今後は民間で宇宙開発に汗
一方、6回目の飛行の意思を問われると「可能性は分からないが、意欲はある。有人飛行の現場で生涯現役という目標にブレはない」と言い切った。「今ISSにいる(ロシアの)コノネンコさんは(滞在中に)1000日を超えるし、世界には7回とかの方もいる。当然、6回でも7回でも8回でも9回でも10回でも目標はある。私や日本が未経験のことに、常に挑戦していきたい」と強調した。
これからの飛行士に求められる技量を問われると「ISSではあまり研究されてこなかったが、月面探査で重要になるのはおそらく地質学。そういった、基礎的な知識としてマスターしなければならない分野がある。月面着陸に必要な特殊技術もある」との見方を示した。AI(人工知能)の進展にも触れ「私が飛行士になった時のような、手動の技術でやっていく時代ではなくなりつつある。そういった中で必要なのは、やはりチームスキル。限られた人数、またストレスが高い環境でチームの成果を最大限に引き出す能力が、今後も重要だ」と持論を語った。
話は1996年の初飛行の思い出にも及んだ。当時は「宇宙に恐怖はないか」とよく聞かれたが、打ち上げや帰還への恐怖はなかったという。しかし宇宙に行って初めての夜、人工衛星をつかむロボットアームに、必要なピンが付いてないという夢を見た。「これでは回収できない。どうしよう。若田頑張れと言われて来たのに…」という内容で、「自分の失敗に対する恐怖が一番大きく、それが表れたのだろう」と振り返った。 若田さんと同様に、新たな挑戦をする人に向け「人生の大きな転換で、希望と不安がいっぱい。だが(皆さんも)新しいことに挑戦する気持ちを常に持って、仕事に取り組んでいってほしい。(同世代の)還暦頃の皆さんは経験やネットワークを生かし、チームを作れるようにして頂きたい」とエールを送った。
「宇宙の最大の魅力は」の問いには「みんなのもので、みんなに限りない夢、希望を与えてくれる空間であること。分からないことを既知のものにしていく喜びがある。新しい環境を使っていろいろな取り組みをすることで、新しい知見や技術、チームワークにつながる」と笑顔で語った。