SNSでバズりまくる「コロンビア大卒のギャル准教授」が、帰国して驚いた“日本の常識”
日本の大学生はもっと遊ぶべき
──長い海外生活を終えて、日本に帰国したきっかけは? BossB:きっかけは、パートナーとの離別です。私が好きなのは、アメリカというよりはニューヨークとカリフォルニアですが、当時はパートナーの仕事の関係でミシガン州にいました。もともと嫌いな場所だったので引っ越すいいきっかけでした。日本で大人として生きたことがなかったから「日本に行ってみるか!」って感じで。それでたまたま自然の美しい信州大学に募集があったから、受けたという経緯ですね。 ──アメリカでの暮らしが長いと、日本の常識に驚くこともありそうですね。 BossB:ありましたね。一つは日本の大学生がおとなしかったこと。「君たちの青春はこれでいいの? 暴れなきゃ!」って思いましたね。私が信州大学に着任したときは留学生担当でしたが、最初に信州大学の国際交流会館を24時まで使えるようにしてあげました。遊べ、ってことです。そしてもうひとつ驚いたことが、デモや政治活動に参加する若者が日本では少なかったこと。その理由の一つに、“抗議することは恥ずかしい”という日本の閉鎖的な空気があることを知りました。私は自分なりに世の中のためになることをしたいと考えていて、それを実行するのは良いことだと思っています。たとえば、コロナ前からエチオピアの貧困農村部で学校にさえいけない女子の支援活動をしていて、そうした社会活動が自分のエンパワにもなっています。
有名になりたくないアナーキー精神
──SNSの総フォロワー数が60万人超え。テレビの出演依頼もきそうですね。 BossB:いやいや、私は有名になりたくはないし、テレビ出演は全て断っています。メインストリームは私のアナーキー精神と相反するものがあるので。社会の「縁」にいる人々に、同じく「縁」からメッセージを届けたい。そのためにSNSを使っています。1990年代、インターネットができたときには「これこそがアナーキーだ!」と叫んだくらい。インターネット以前の海賊ラジオ的感覚です。今でこそSNS界はグーグルなどに牛耳られていて、人々は偏ったフィルターバブルにマインドコントロールされてしまっていますが、自由という基本精神は残っていると信じています。 ──自由に意見するのは、日本で組織に属する人にとってはなかなか難しいです。 BossB:守るべき家族がいる人は、職場で意見することは難しいと感じるかもしれません。一方、年を重ねると立場が上になることも多いので、上の人間には下が意見を言いやすい土壌をつくってあげてほしい。発想が限りなく自由で創造性があるのは若者たちのほうだから。経験を重ねた人間には知恵がある。まあ、なかにはない人もいますが、ある可能性が高い。その知恵を未来ある若者たちの才能開花のためにどう使うかなんです。地位や権力のある中高年の知恵と若者の創造力とパワーが合体したときにイノベーションが生まれるのではないでしょうか? ──今後もSNSでそうした発信を続けていく予定? BossB:そうですね。発信する手段としてSNSは続けていきます。あとは、日本のストロングポイントであるアニメや漫画を使って宇宙思考を広めたいし、全国ツアーもやってみたい。本が台湾語に翻訳されるから台湾や中国でも私のメッセージが届くのか試したいし、学者としては宇宙と哲学の複合領域で何か生み出したいですね。 ──生涯現役ですね。 BossB:祖母も116歳まで自由奔放に生きたから、私も120歳まで生きますよ! ピース! BossB 1971年生まれ。本名・藤田あき美。ニューヨークの工科大学に進み、’03年コロンビア大学大学院博士課程修了(天体物理博士号)。研究所勤めを経て、約7年間育児に専念。帰国後、’14年から信州大学工学部工学基礎部門講師。’22年から准教授 取材・文/櫻井一樹 撮影/武田敏将 ―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
日刊SPA!