苦戦を強いられたブラジルの課題と収穫
スコアは、試合内容を忠実に反映しないことが少なくない。その典型のようなゲームだった。開催準備の大幅な遅れ、反対デモ、ストライキといったワールドカップ史上でも稀な問題が噴出。最初に試合を行なうというのに最も建設作業が遅れ、IT設備の設置やスタジアム周辺の整備が未完成のまま見切り発車したサンパウロ・アレーナでの開幕戦である。 6万2千人の観衆が色彩豊かでダイナミックな踊りと歌を散りばめたセレモニーが終わった後、ブラジル、クロアチア両国の選手の入場に総立ちで大歓声を上げる。昨年のコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)のときと同様、ブラジル国歌吹奏の録音が終わっても選手と観衆が一体となって大合唱。多くの選手が感動の涙を目に浮かべながら、試合に入った。 ■対照的だったブラジルとクロアチア ブラジルのゲームプランは、前半15分くらいまでに先制して試合の主導権を握り、余裕を持って試合を進め、中押し、ダメ押しを加えて安全確実に勝つこと。ところが、コンフェデ杯でうまくいったこのやり方が、この日は機能しない。選手の過剰な闘志が気負いとなり、ミスが続出。得点はおろか、決定機を作るはるか前の段階でボールを失い続ける。 これに対し、クロアチア選手はコンディションが非常に良く、闘志も旺盛。ブラジルの伝統的な弱点である両サイドバック(SB)に背後を突いて、チャンスを作る。前半11分、クロアチアが左サイドでボールを奪うと、素早くパスをつないで中盤を突破し、オリッチがグラウンダーのクロス。ゴール前へ飛び込んだCFイエラビッチが合わせ損ねたのだが、そのすぐ後ろにいたブラジルの左SBマルセロの右足に当たってゴールイン。ブラジルは、オウンゴールという最悪の形で先制を許してしまった。 ■失点で目を覚ましたブラジル 人口わずか430万人の小国が、2億人を超えるフットボール超大国に衝撃を与えたのである。それまで大騒ぎを繰り広げていた地元観衆が凍りついた。非常事態に至って、ブラジル選手はようやく目が覚めたようだった。 22分、MFオスカールが中盤で一度失ったボールを粘って奪い返し、ネイマールへ。ネイマールがドリブルでボールを前へ運び、ペナルティエリアの外から左足で低いシュート。それほど強烈ではなかったが、長身GKプレティコサ(身長193cm)の反応が少し遅れ、わずかに手が届かない。ファーサイドのポストを叩いてゴールへ飛び込んだ。以後、ブラジルが試合の主導権を握り、クロアチアがカウンターを狙う構図となるが、クロオチアは引き気味になりながらも高い身体能力でしっかり対抗する。