苦戦を強いられたブラジルの課題と収穫
■ブラジル “幸運”だった2点目 後半26分、ブラジルはダニエル・アウベスとオスカールの連携で右サイドを崩し、オスカールがグラウンダーのクロス。CFフレッジがペナルティ・エリア内で背後からCBロブレンにわずかに肩に手をかけられて派手に倒れる。ごく軽い接触で、欧州の経験豊かな主審なら10中7、8見過ごすプレーと思えたが、西村雄一主審の判定はPK(ブラジル国内の論調も、「PKではなかった」が大半)。 ネイマールが向かって左へ蹴ったが、コースが少し甘い。GKプレティコサが手で弾いたが、ギリギリ、ゴール左上隅に収まった。ブラジルにとっては、二重に幸運な逆転ゴールだった。その後、クロアチアが懸命に反撃したが、ブラジルはダビ・ルイスとチアゴ・シウバ両CB、ボランチのルイス・グスタヴォ、GKジュリオ・セザールらが闘志を剥き出しにして懸命に守る。 厳しい状況から立ち直ったブラジル そして、後半ロスタイム、途中出場のMFラミレスが中盤で相手ボールを奪うと、オスカールがドリブルでDFをかわし、右足つま先でミドルシュートを決めて突き放した。前半は、クロアチアの思惑通りで、ブラジルにとっては非常に嫌な流れが続いた。PKの判定が試合の行方を大きく左右したのは確かだが、ブラジルも厳しい状況から立ち直った精神力は褒めていいだろう。 大黒柱のネイマールが実力を発揮し、大会前の強化試合で不調で批判を受けていたオスカールが3得点すべてにからむ活躍。両GK、GK、グスタヴォも持ち味を発揮した。ボランチのパウリーニョと右SBダニエル・アウベスは共に精彩を欠いたが、途中出場のボランチ・エルナネスとラミレスが豊富な運動量と旺盛な闘志で攻守に貢献した。 ■重要な意味を持つメキシコ戦 17日のメキシコ戦では、パウリーニョの代わりにエルナネスかラミレス、ダニエル・アウベスのポジションでマイコンが起用されるかもしれない。いつのワールドカップでも、一次リーグ最初の試合は難しい。スコアはさておき、クロアチアの健闘が光った試合で、セレソンのプレー内容は決して褒められた内容ではなかった。それでも、現在のチームは戦い方が整理されており、精神的な逞しさがある。この勝ち点3は、選手たちに落ち着きをもたらすはずだ。 しかし、堅守とカウンターを特長とするチームが守備のミスから先制を許すようでは、優勝などとうていおぼつかない。その意味で、次戦が非常に重要な意味を持つ。守備の組織力を高め、攻撃もオプションを増やして、しっかり勝ち切らなければならない。もしそれができないと、今度こそ大変なことになりかねない。 (文責・沢田啓明/ブラジル在住ジャーナリスト)