令和なら3000万円! 国産車初ショーファーカー日産「プレジデント」登場【今日は何の日?12月9日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日12月9日は、日産自動車の最高級車「プレジデント」が誕生した日だ。全長5045/全幅1795/全高1460mm(現行クラウンクロスオーバー:4930/1840/1540mm)の堂々たるボディに、4.0L V8エンジンを搭載した日本初の本格ショーファーカーである。 TEXT:竹村 純(JUN TAKEMURA)/clicccar 日産・プレジデントの詳しい記事を見る ■日産が誇る最高級車プレジデント誕生 1965(昭和40)年12月9日、日産自動車が誇る最高級車「プレジデント」が誕生した。モータリゼーションが加速する中で、政府要人のVIPカーや会社幹部の社用車といったショーファーカー国産化の要望に最初に応えて誕生したのが、日産プレジデントだった。 国産ショーファーカー誕生の要望 1960年代、日本は高度経済成長期を迎えて、一般庶民にも手の届く純国産車が続々と登場し、日本のモータリゼーションが加速した。 そのような中、政府要人や会社幹部などを送迎する純国産ショーファーカーへの期待が、官公庁や大企業から自動車メーカーに寄せられた。ただ当時の日本では、ロールス・ロイスやメルセデス・ベンツ、キャデラックのような大型高級車を製造する技術はなかったので、既存の高級車の拡大モデルで対応するしかなかった。 最初に登場したのは、1963年の日産「セドリック・スペシャル」で、セドリックのホイールベースを205mm延ばした全長4855/全幅1690/全高1505mmのボディに、最高出力115ps/最大トルク21kgmの2.8L直6エンジンを搭載。前後3人乗車の6人乗りで、高級織物で覆ったシートやパワーシート、パワーウインドウなどを装備し、その大きさと豪華さから日本初の大型乗用車と位置付けられ、車両価格は国産乗用車中最高の138万円だった。 1965年にセドリックが初のモデルチェンジを迎えるが、セドリック・スペシャルの後を引き継いだのが、3ナンバー専用車のプレジデントだ。 堂々たるショーファーカーのプレジデント プレジデントは、1965年10月の東京モーターショーで華々しくデビューを飾り、そのサイズ感と豪華さで観衆の目を釘付けにした。発売は、2ヶ月後の12月のこの日から始まり、主要な用途は官公庁要人のVIPカーや会社幹部の社用車といったショーファーカーだった。 最大の特徴は、当時のリンカーン・コンチネンタルより長い1940mmの室内長であり、ショーファーカーらしく広い室内スペースいっぱいに豪華さを演出。シートは、ベンチタイプ、セパレート、セミセパレートが用意され、機能面でも熱線吸収ガラスのフロントウインドウや電熱線入りリアウインドウ、パワーウインドウ、パワーベンチレーター、パワードアロック、パワーシートなどの豪華な装備が満載された。 ボディは、強度剛性の高いモノコックボディを採用、サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン/リアがリーフリジッドという当時の高級車の定番を装備。またステアリング機構として、乗用車として日本初のパワーステアリングが採用されたことも注目である。 パワートレインは、最高出力180ps/最大トルク32.0kgm を発揮する4.0L V8 OHVエンジンと130ps/24.0kgmの3.0L直6 OHVエンジンの2機種と、3速ATおよび3速MTの組み合わせ。 車両価格は、4つのグレードで185万/200万/250万/300万円に設定。当時の大卒初任給は2.3万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約1850万/2000万/2500万/3000万円に相当する。 2年後にライバルのトヨタセンチュリー登場 トヨタ「センチュリー」は、プレジデントに対抗する形で2年後の1967年に登場。プレジデントと同様、主にショーファーカーとして使われた。 センチュリーは、宇治平等院の鳳凰をモチーフにしたエンブレムや独特のボディカラーを採用して高級感を演出。フロントサスペンションは、国産初のエアサスペンション、ブレーキは4輪ドラム式、その他にもドア自動ロック(30km/h)、ビルトインエアコンディショナー、オートライトなど、当時の最高の技術が投入された。 パワートレインは、新開発の最高出力150ps/最大トルク24.0kgmを発揮するアルミ製3.0L V8 OHVエンジンと、3速ATおよび3速/4速MTの組み合わせ。 車両サイズは、プレジデントの全長5045mm/全幅1795mm/全高1460mmに対して、センチュリーは4980mm/1890mm/1450mm。車両価格は、プレジデントのグレード別で185万/200万/250万/300万円に対して、センチュリーは同じくグレード別で208万/228万/238万/268万円だった。 いろいろな面でほぼ同等レベルのプレジデントとセンチュリーは、その後も進化しながら日本の最高級車として長くライバル関係が続いたのだ。 ・・・・・・・ トヨタのセンチュリーは、モデルチェンジしながら現在もトヨタが誇る最高級車としてラインナップし続けている。一方のプレジデントは2010年に生産を終了。当時の日産には、プレジデントを存続させる余裕がなかったということだろうが、再びセンチュリーに対抗できる日本が世界に誇る最高級車を復活させてほしいものだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純