欧州で進む「見せかけだけの環境対策」への規制、フィンエアーはCO2削減へ新目標、達成に向けた取り組みと今後を責任者に聞いてきた
フィンエアーはこのほど、二酸化炭素(CO2)排出量削減の取り組みについて、2019年に設定した2045年までの排出量実質ゼロの目標を改めた。企業の脱炭素目標を評価する団体「サイエンス ベースド ターゲット イニシアティブ(Science Based Target Initiative: SBTi)」の認定を受け、科学的根拠に基づく中長期目標を設定した。 まず、2023年を基準として、2033年までにCO2排出原単位(CO2e/RTK)を34.5%削減する。これは総排出量の約13%の削減に相当する。そのうえで、業界の共通目標である2050年までの排出量実質ゼロを目指す。 先ごろ来日した同航空サステナビリティ担当シニア・バイス・プレジデントのエヴェリーナ・フーッレ氏は、「2019年当時の考えとしては、ほぼオフセッティングで賄うという考えが主流だった。しかし、その後、新型コロナなど世界は目まぐるしく変わった。2024年現在の共通認識として、自社のオペレーション内で排出量を削減していくことが求められている」と説明。背景には、欧州で近年、航空会社による「グリーンウォッシング(見せかけだけの環境対策)」に対する規制が厳しくなっているほか、欧州/アジア路線でロシア領空の飛行禁止などビジネス環境の変化が起きていることなどもある。
欧州のSAF規制、「2%であれば問題なし」
新たな目標の達成に向けて、まず重視するのがSAF(持続可能な航空燃料)の活用だ。フィンエアーは、自発的に750トンのSAFを購入し、取り組みを加速している。 フーッレ氏によると、SAFによる削減は目標の半分以上を占めることになるという。新たな自社目標の設定では、カーボンオフセットは含まれていないが、「SAFを使ってA地点からB地点に移動したとしても、バリューチェーンの中で排出量を100%削減するということは無理。そこはカーボンオフセットを活用していく」(同)。 また、SAFが2025年1月から欧州連合 (EU) 諸国からの出発便に対し、2%の法定混合割当量が義務化されることについても言及。「2%のレベルであればまだ問題ないと思う」との認識を示した。その後、2030年に6%、2035年に20%、2050年に70%に段階的に混合割合が引き上げられる。その点については「価格も含めて、その時の世界のSAF市場の規模によって、航空会社への影響は大きく変わってくる。現時点では、まだわからない」と話すにとどめた。 このほか、2023年のSBTi目標達成に向けては、ネットワークの最適化、新型機材の導入、機体重量や燃料消費の効率化などを進めていく。さらに、「最新技術も目まぐるしく変化している」(フーッレ氏)ことから、新たに動力源として水素によるインフラ開発にも力を入れていく方針だ。