シャビ、カシージャス世代とイニエスタ、シルバ世代。2つの世代によるスペイン黄金期はいかにして始まったのか――。
ブスケッツやピケの世代も吸収し、スペインの黄金期は極まる
パス&ムーブが連続する美しいフットボールの礎を築いた名将は、タイトルを置き土産に代表を去るが、以降も2つの黄金世代は輝きを放ち続ける。時を同じくしてジョゼップ・グアルディオラがバルセロナの監督に就任(08年夏~)し、シャビを起点にテンポよくパスを回す“ティキ・タカ”スタイルでセンセーションを巻き起こしつつあったことも大きかった。アラゴネスの跡を継いだビセンテ・デル・ボスケは、レアル・マドリーで銀河系軍団を率いた指揮官だが、かつての宿敵のスタイルを躊躇なく代表チームに取り入れた。 高級マグロを煮て食べるような無粋はしない。良質な素材をそのまま活かすデル・ボスケのチーム作りは、ときに「バルサのコピー」とのそしりも受けたが、それでもペップ・バルサと足並みを揃えるように栄光の道を突き進んでいく。セルヒオ・ブスケッツ、ジェラール・ピケ、ペドロ・ロドリゲス――いずれもバルサの選手だ――といった80年代後半生まれの世代も吸収し、10年W杯で初の世界王者に輝くと、さらに2年後のEUROも制覇。メジャータイトル3連覇の偉業を成し遂げ、スペイン黄金期はここに極まるのだ。 アラゴネスが融合し、デル・ボスケのもとで伸び伸びと育った2つのゴールデンジェネレーションは、間違いなく後世に語り継がれるエポックメーキングな存在だった。しかし、盛者必衰のことわりに例外はない。王者として臨んだ14年W杯でまさかのグループリーグ敗退を喫すると、この大会を最後に強いスペインの象徴だったシャビが代表を引退。以降二度のW杯はいずれもベスト16敗退に終わっている。 「僕たちは、少しだけ勝つことに疲れてしまったのかもしれない」 14年W杯で早期敗退が決まったとき、F・トーレスはそんな言葉を口にしたが、モチベーションの低下だけが黄金時代終焉の理由ではないだろう。簡単に言えば、そのあまりの強さゆえ、対戦相手に研究し尽くされたのだ。対抗手段として台頭したプレッシングフットボールの渦に、彼らは流麗なパスワークごと飲み込まれてしまった。 それでも、あの大航海を終えた脱力感から、ようやく抜け出しそうな気配も漂っている。02 年生まれのペドリ、04年生まれのガビ、そして07年生まれのラミネ・ヤマルとパウ・クバルシ。奇しくもバルサでシャビの教えを受けた若き才能が、先人の偉大なレガシーを継承しつつ、ラ・ロハに新たな地平を切り開いてくれることだろう。 文●吉田治良 ※ワールドサッカーダイジェスト5月2日号の記事を加筆・修正
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