〈欧米と日本のコンテナの大きさは違う?〉独自の発展により日本が失ったコンテナ輸送のメリット
欧米各国のコンテナ標準化
このような国際コンテナ輸送のメリットは、北米・欧州域内やそれら地域の国内の貨物輸送にも影響を与えることになり、下表が示す通り、各域内でもコンテナの標準化が推進されてきた。 欧米各地域のコンテナのサイズは、長さと幅を中心として、国際海上コンテナ以上となっており、特に北米地域については、長さ48フィートの時代から53フィートの時代に移行していることが見て取れる。これらの仕様の変化は、北米のトレーラーのサイズの変化を反映している。 先述の通り、1980年代のトレーラーの主流であった45フィート型が、現在では国際海上コンテナの形式のひとつとなっており、現在の欧州のトレーラーサイズの主流となっている1360cm型トレーラーもほぼ45フィートの長さであることを考えると、10年後あるいは20年後に48フィートや53フィートのコンテナが国際海上コンテナ市場に現れるのか、注目しておく必要があるかも知れない。 いささか話が横道に逸れたが、いずれにしても欧米では、国際間輸送のみならず、域内輸送および各国内輸送においても、先述のようなコンテナ・インタクト方式によるインターモーダル輸送のメリットが享受されているのである。
サイズ・規模共に小規模な日本のコンテナ
それに対して日本のコンテナおよびコンテナ輸送システムは、先に表1で示した通り、JR貨物の12フィートの5トン積みコンテナに至る極めて独自の発展を遂げ、現在に至っている。 そのような独自の発展を通じて独自に標準化されたJRコンテナの仕様は、下表の通りである。 多くの読者の方々は上表を一目見て気付かれると思うが、20フィートコンテナや11トントラックの荷台の仕様に合わせた31フィートコンテナもわずかながら運用されてはいるものの、ほとんどが長さ12フィート5トン積みの小さなコンテナなのである。 なぜかJR貨物は、2017年1月に発表した上表の情報を最後に、コンテナ形式ごとの保有数を公開していないようであるが、現時点の同社ウェブサイトで公開されているコンテナ保有数が6万2153本と漸減傾向となっていることを踏まえると、12フィート5トン積みコンテナが引き続き大勢を占めていることに変わりはないであろう。これを見てガリバー旅行記の小人の国を想起するのは、筆者だけだろうか。 1970年以降50有余年、12フィート5トン積みのJRコンテナが国内輸送の主流コンテナであり続けて来た日本では、今や国際標準となっている、コンテナをDoor-to-Doorで貨物積み替えなしで輸送するインタクト方式は定着せず、インターモーダル輸送のメリットが十分に享受されて来なかったのである。このことが、日本の貨物輸送の労働生産性を大きく阻害して来たことは、否定できないであろう。 次回は、もう一度だけ横道に逸れることをお許し頂き、日本における国際海上コンテナの流動とインターモーダル輸送の実態を詳細なデータをもとに、深掘りして行くこととする。
田阪幹雄