「俺はデキる」という人ほど要注意?「残業代ゼロ」の対象は
政府は、新しい労働時間の制度、いわゆる「残業代ゼロ制度」の導入に向けて検討を進めている。6月中に発表される新しい成長戦略に盛り込むべく、内容が検討されているが、「どんな人まで対象にするか?」が大きな焦点だ。「自分は対象になるのか?」と気になるサラリーマンは少なくない。5月下旬の会議で、企業の代表が出した案をもとに、対象になりそうな人を探ってみた。 このテーマを話し合ってきたのは、政府の「産業競争力会議」。ここで5月28日、新しい労働時間制度の案が示された。提出したのは長谷川閑史氏。武田薬品工業社長で、経済同友会の代表幹事を務める人物だ。事実上、この案こそ日本企業の多くの経営者たちが「実現したい」と考えている制度と言ってよいだろう。 資料は計7枚で、タイトルは「個人と企業の持続的成長のための働き方改革」。この5枚目に「新しい労働時間制度の対象者イメージ」という、そのものズバリな記載がある。じっくりみてみよう。ここでは、たて軸とよこ軸のグラフが描かれ、働く人材を分類している。たて軸は「能力・経験・実績」。よこ軸には「業務・執行、労働時間の裁量度」。それぞれ、能力(裁量)が高い人ほど、上方向(右方向)に向かう。逆に、能力や裁量が低い人は、下方向(左方向)に割りふられることになる。 そして、「残業代ゼロ」の対象になるのは、このグラフで「右上」に位置する人たち、と明示されている。つまり、「能力や経験、実績が豊富で、業務や労働時間を自分で決められる人たち」が対象になるわけだ。グラフでは、黄色になっている部分に当たる。逆にいうと、グラフで「左下」に位置するような能力も裁量もない人は論外。さらには、「左上」にあたるような、能力があっても労働時間に裁量がない人、例えば「運転手」や「建設作業員」などの肉体労働系も除外される。また、いくら労働時間を自分で決められても、能力や経験のない「右下」の人々も対象外だ。 では、グラフ「右上」に位置するような人たちとは、具体的にはどんな仕事を指すのか?説明書きによると、「各部門・業務においてイノベーティブな職務・職責を果たす中核・専門的人材」、「将来の経営者たち・上級管理職候補等の人材」とされる。あいまいな記述なので、もう少し掘り下げてみてみる。すると、「一定の責任ある業務・職責を有するリーダー、プロジェクト責任者等」という説明があり、具体例として「経営企画:全社事業計画策定リーダー」「海外プロジェクト(工場立上げ等)リーダー」「新商品企画・開発、ブランド戦略等の担当リーダー」「ファンドマネジャー」「IT、金融等ビジネス関連コンサルタント」「経済分析アナリスト」があげられている。