「俺はデキる」という人ほど要注意?「残業代ゼロ」の対象は
ファンドマネジャーや経済分析アナリストなどは明確であるものの、他の「リーダー」というのはあいまいだ。企業側が「リーダー」を命じれば、すぐ適用できそうな印象を受ける。大手企業の総合職なら、誰もが任命される可能性がありそうだ。 さて、案では、こうした新しい制度を適用するには、企業側と本人の「合意」が必要だとしている。本人の希望次第で「出入りは可能」だとうたっている。だが、上記のような、あいまいな「リーダー」に就かせるため、上司から「キミは中核だから」「幹部候補だから」「実績があるから」などとおだてられたら、どうだろうか?「俺はデキる」と思い込んでいる人は、「その通りだ」と内心考え、喜んで合意するのではないか。 往々にして、仕事の自己評価というものは、周囲の客観的評価よりも高くなりがちなもの。あいまいな基準のままでは、「あなたは幹部候補」とおだてられ、「残業代ゼロ」になる人々が増えていきそうな気配がぬぐえない。逆に、「俺はダメだ」と自己評価の低い人は、上記のようにおだてられても効かないので、対象から逃れやすいのかもしれない。ただ、企業の本音は「デキない人の給料を下げたい」はずなので、こうした人たちが旧態依然とした労働制度のもとでぬくぬくと生きていけるかどうか。 たとえ上記のいずれでなくても、年功序列で上下関係が厳しいことの多い日本企業では、上司からの頼みは断りづらく、「労使の合意」は有名無実になりかねない危険も潜む。長谷川氏が示した案は、あくまで案に過ぎない。厚生労働省は表向きこの案に反対しており、対象は「世界レベルの高度専門職」と、極めて限定した人たちにとどめたい考えだ。企業側と厚労省がせめぎ合い、どんな案で手を打つのか、今後の議論に注目が集まる。 (文責・坂本宗之祐)