無名の町に人を呼び込む「周遊型謎解きイベント」が今日本で急増しているワケ
インバウンド需要を見込んだ対応
興味深いのは、今回の秋田県の謎解きイベントでは、インバウンド客も対象にした多言語化(英語)したキットを用意したことだ。先述の秋田県観光連盟の畠澤さんはその点についてこう話す。 「当初は多言語化する予定ははなかったのですが、観光庁の支援事業(インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成)の採択を受けたことから多言語化を行いました。 ただし、実際にはインバウンド客にはなかなかハードルが高く、来客数は予想より伸び悩みました。グーグルで上位に表示されるよう工夫したり、バナー広告を掲載したりするなどの対応を行いましたが、改善点として広告の方法や期間に問題があったと考えています。 当初は東アジアや東南アジアなどのインバウンド客が主たるターゲットと考えていましたが、実際には英語圏の方が多くエンゲージしたとの報告を受けています。実際、英語圏の方はグーグルで『謎解き』を検索しており、今回のイベントHPにたどりついたものと考えています」 イベントクリエイター側のかげたろーさんによると「謎解きの内容は、日本語版と英語版では問題が異なっていて、難易度もそれほど高くない。具体的には、文字クイズだと海外客にはハードルが高いため、記号やシルエットなどを多用し、言語の壁を飛び越えやすい仕様にした」そうだ。 謎解きイベントの今後についてかげたろーさんは熱くこう語る。 「謎解き業界はこれから更なる発展を遂げていくと思います。これまで謎解きイベントは主に東京・大阪を中心とした首都圏エリア中心だったのですが、近年ではぼくの地元の秋田など、全国的に取り組み事例が増えています。 遠方からの集客や、街の魅力を遊びながら楽しく伝えられるという点で地域活性と相性が良いことから、来年はトレンドとして爆発するのではと思っています。 特に地域周遊型の謎解きは地域側の導入ハードルもさほど高くなく、一度制作をすることで繰り返し利用できる「街の資産」としての側面もあることも、全国的な導入の広がりに寄与していると考えています」 すでにインバウンド集客に活用する模索が始まっているという周遊型謎解きイベント。今後の展開に注目だ。 写真=東京ディープチャイナ研究会 取材協力=東京メトロ、一般社団法人秋田県観光連盟
中村 正人(インバウンド評論家)