無名の町に人を呼び込む「周遊型謎解きイベント」が今日本で急増しているワケ
周遊型謎解きイベントをつくる人たち
ところで、周遊型謎解きイベントはどのような人たちがつくっているのだろうか。 冒頭で紹介した「池袋ディープチャイナミステリー」を制作したのは「KAGENAZO」というZ世代を中心としたクリエイティブチームだ。謎解きを通じて各地に眠る魅力をエンターテイメントの力で引き出し、多くの人に地域を知ってもらえるきっかけや、街が元気になる仕掛けづくりをミッションとして掲げている。 代表の「かげたろー」さんは池袋の「ガチ中華」をテーマにした謎解きイベントの狙いについてこう語る。 「このイベントがなければ絶対行かないような街に行けるチャンスを与えてくれるのが謎解きです。今回企画にあたって自分も初めて池袋西口を歩きましたが、この街にはこんなにディープなスポットがあふれていたのかと驚きました。そんなスリリングな感触をイベントに参加する人たちにも味わってほしい」 実際にイベントのシナリオや謎解きをつくった同チームの謎解きクリエイターの「ゆうと」さんも「池袋というのは、街を実際に歩き、謎解きしている瞬間、未知なるディープな世界がすぐ隣り合わせにあるところが刺激的でした」と話す。 秋田県出身で玩具メーカー会社社員だったかげたろーさんが独立して謎解きクリエイターチームを立ち上げた背景には、以下のような思いがあった。 「私の故郷である秋田県は人口減少や高齢化などの課題が山積する地域です。何か地域のために貢献できることはないか。謎解きというコンテンツをきっかけに、今まで思いもしなかった場所に人が訪れる。その地をまだ訪れたことのなかった人が足を運び、地域の魅力に触れ、繰り返し訪れるようなファンになってもらいたい」
「秋田県雪祭り×謎解き体験ミステリー」
そんなかげたろーさんが今春(1月27日~2月20日)地元秋田県で手がけたのが、謎解きイベント「【雪魔法と謎の降る夜】 秋田県雪祭り×謎解き体験ミステリー」だった。県内7カ所を舞台に地元文化や伝統にまつわる謎解きを通じて冬の魅力を楽しむというものだ。 一般社団法人秋田県観光連盟主任の畠澤亮輔さんは、この企画を実施した経緯や目的について次のように話す。 「秋田県の観光産業は、冬季の来客数が少ない状況ですが、県内各地で小正月(旧暦の1月15日で最初の満月の日)や冬まつりなどの伝統行事があります。ただこれまで県内で連携した取り組みがなく、観光客の流動性に欠けていたため、謎解きイベントを通じて県内周遊を促し、冬季の来客数、宿泊者数の増加につなげようとしたのです」 どんな効果があったのだろうか。 「客層はお子様連れの40代、次いで30代、10代。県外から来訪者もいました。やってよかったこととして、家族やグループで参加しやすく、一緒に考えながら周遊することで、コミュニケーションが深まり、参加いただいた方にご満足いただけたこと。 謎解きの設問が地域の文化や自然、歴史がテーマであり、景品を地域の特産品にしたことで、地域への興味を持っていただけたこと。観光コンテンツと謎解きを結びつけたイベントという新しい集客方法を県内の観光事業者へ広めることができたことが挙げられます。 課題としては、謎解きがまだ広く認知されていないこと。今回は広域で実施したため、移動の利便性に集客が左右されたこと。コンテンツとしては集客力があるので、狭い範囲を設定し、街歩きをしながら実施すると参加者が多くなると思いました」 秋田県内の各市町村では、今回の実施結果を共有したことから、今年度はすでにいくつかの地域で謎解きイベントが実施されたという。