京都大学

　大腸内の細菌群「腸内細菌叢（そう）」（腸内フローラ）のバランスが乱れている幼児は恐れや怒り、悲しみを発しやすく、将来的なうつ病や不安障害といった精神疾患のリスクが高いと、京都大などの研究グループが発表した。米科学誌に9月6日掲載された。 【図解】がん患者に腸内細菌移植の研究も

　外部からの環境や刺激に対し、感情や行動がどう反応するかは、本人の気質として生後間もない時期から一貫した特性とみられている。これらを律する脳の前頭前野は生後3～5歳で発達する。一方、腸内フローラは心身の健康に影響を与えると報告されており、こちらも同じく3～5歳で菌の構成がおおよそ固まるとされている。

　研究グループは、幼児期にメンタルヘルスのリスクを予測できないかを調べるため、日本人の3～4歳284人の便を遺伝子解析し、腸内フローラの組成を分析した。併せて保護者に約90項目の質問について、子どもの行動の傾向を各7段階で評価してもらった。

　その結果、体内へのエネルギー供給や抗炎症作用など体に好ましい影響をもたらす菌が少なく、炎症を誘発する菌が多いという、腸内フローラのバランスが乱れた状態では、不快な感情が出やすく、脅威を感じやすい「否定的情動性」が高い傾向があった。一方、腸内細菌の多様性が豊かなほど積極的な気質の傾向だったという。

　京大教育学研究科の明和政子教授らの研究グループは「就学前までに腸内細菌叢を評価して心身の健康を予測することで、その特性に合わせた支援を早期に行える可能性がある」としている。