敵機に逃げられる!?「じゃあ戦闘機を垂直に打ち上げよう!」ドイツが作った驚愕の迎撃機 もはや“有人対空砲”
驚愕のパイロット帰還方法とは
戦闘の方法は、有人の対空砲弾のような要領で、まず地上の警戒監視部隊が米英爆撃機の編隊を確認すると、機体は前述したように空へ向けてほぼ垂直に打ち上げられます。 そこから約60秒で高度1万2000mに到達した後、残りの40秒弱で飛来する米英の爆撃機群を見つけ接近、距離約550mで機首に装備した24発のロケット弾を一斉に発射します。なお、戦果を確認する余裕はないので、そのまま爆撃機編隊から反撃を受ける前に急いで離脱します。 なおパイロットの帰還方法もまた特殊です。胴体内のメインロケットはすぐに燃料を使いきってしまうため、エンジンの推進力を使って飛行場に着陸することはできません。さらにMe163のような翼もないため、滑空することも不可能です。そのため、エンジンの燃料がなくなると、パイロットは機体から脱出し、パラシュートで地上に帰還する方式でした。 トータルの飛行時間はわずか2分。これだけの短時間で敵機に攻撃を仕掛けるだけではなく、そのまま機体から緊急脱出を行い生還するというのはパイロットにとってかなり難しいといえるでしょう。テスト時にその問題は露見しており、1945(昭和20)年2月28日に初の有人飛行を実施した際、射出時の衝撃でパイロットが失神し、墜落しています。 その後、3度のテスト飛行に成功し、量産のゴーサインこそ出たものの、滞空時間の短さが指摘され、改良が続けられます。ドイツの敗戦までに36機が完成しましたが、実戦投入されることはありませんでした。
斎藤雅道(ライター/編集者)