楽勝だったな…父の財産7,000万円を「タンス預金」→隠蔽成功!2回目の税務調査で〈多額の追徴課税〉に。調査官の闘志に火をつけた“息子の対応”【税理士が解説】
父の口座からコツコツお金を引き出し、自分の貸金庫に隠すことで残高を減らし、相続税を回避しようと考えたAさん。しかし、父の死後、税務調査により多額の追徴課税を受ける羽目に……“足がつかないお金”であるタンス預金を、税務署はなぜ見破ることができるのでしょうか。相続専門の税理士であり、庶民的な家庭から100億円を超える資産家まで、多くの相続事例を担当してきた大田貴広氏の著書『相続のお金の残し方「裏」教科書 専門税理士が限界ギリギリまで教える“99%節税できて100%モメない”方法』(KADOKAWA)より、具体的な事例が書かれた箇所を一部抜粋してお届けします。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
なぜ、タンス預金は税務署にバレるのか
みなさんは「銀行からお金を引き出してどこかに隠せば、税務署には見つからないのではないか」と考えたことはありませんか。この考えは甘いです。タンス預金を隠そうとしても、後々高い確率で税務署に暴かれます。彼らは歴戦の猛者です。誰もが一度は考えるような脱税の手口は、いとも簡単に見抜かれてしまいます。 もし脱税が見つかれば、重加算税という重いペナルティがかかる上に、最悪逮捕される可能性もあります。ここでは、脱税をたくらむ主人公Aさんを題材に、税務署がどのようにタンス預金を調査していくかを解説します。
余命3年の父…妻は先立ち、身寄りは一人息子だけ
物語は、ある日、Aさんの父が体調を崩してしまうところから始まります。病院で診てもらった結果、父は余命3年と宣告され、それ以降は入院生活を送ることになりました。父は妻に先立たれており、身寄りは息子のAさんだけでした。そこで父はAさんにある頼みごとをします。 「息子よ。俺は今までたくさん働いてたくさん税金を払ってきた。そして1億円も財産を築いた。せっかくここまで財産を築いてきたのに、最後相続税で何千万円も取られるのはかなわん。どうにかならんか」 仮にこのお父さんが亡くなると、相続税はどれくらいかかるのでしょうか。財産額が1億円、相続人が息子のAさん1人の場合、相続税は1,220万円かかります。相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で、このバーを越えてしまうと相続税がかかります。このお父さんの場合、基礎控除が3,600万円(3,000万円+600万円×1人)ですので、財産額がこの額を下回れば相続税はかかりません。 息子のAさんは、税理士などには頼らずに相続税がかからない方法を考えました。そこである一つの結論を出します。 「そうだ。お父さんの口座からコツコツお金をおろして、自分の貸金庫に隠せば、口座の残高が相続税の基礎控除の3,600万円以下になるから、相続税はかからないな」 このことを話すと父は「そうか。相続税のことは任せた。私の通帳と印鑑を預けるから好きなようにしてくれ」ということで、Aさんに通帳などを預けました。
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