楽勝だったな…父の財産7,000万円を「タンス預金」→隠蔽成功!2回目の税務調査で〈多額の追徴課税〉に。調査官の闘志に火をつけた“息子の対応”【税理士が解説】
なぜ税務署はAさんの脱税に気づいたのか…
そこから約2年が経過し、「へっへっへ。やっぱり相続税はかからなかったか。意外と税務署はちょろいなぁ」とAさんが安心しきっていると、ある日、一本の電話が鳴ります。「税務署のものですが、お父さんの税務調査を行わせてください」ということで、税務署はAさんが脱税していることに気づき、税務調査が入ることになりました。 相続税の税務調査は、財産が何億円もある資産家だけに入ると思われているかもしれませんが、このような明らかな脱税があった場合、その規模を問わず行われます。1度税務調査が入ると、そのうちの約87%の家庭が何らかの追徴課税を受けることになります。 では、なぜ税務署はAさんの脱税に気づいたのでしょうか。それはKSKシステムです。KSKシステムには、今まで年収をどれくらいもらっていたか、不動産の賃貸収入があるか、過去に不動産を売却して高額なお金が入ったか、多額の保険金を受け取っていたか、金(きん)の売却をしてお金が入ったかなどの情報が入っています。 税務署は、このような財産とお金にまつわる情報を、支払調書を通じて把握します。相続税がかかるような資産家は、過去にこれらの収入の痕跡を残しているので、税務署はKSKシステムの情報からどれくらいお金を貯めているかを推定します。よって財産の推定額と納税者の申告とに大きな差がある場合は、「この家庭は何か財産を隠しているに違いない」と気づくのです。 違和感に気づくと、税務署は次に金融機関に調査をかけます。税務署は、その職権で最長10年分の預金取引を全て確認できます。故人だけではなく、その家族の通帳も全て確認します。超富裕層で何年も前からマークされている場合や、調査で現物確認される場合は、10年以上の期間を見ることもあります。特に亡くなる直前3年間は重点的に見られます。 もし亡くなる直前に多くの引き出しがあるのに、家族の通帳に預金がない、また贈与税申告もされていないということであれば、どこかにタンス預金がある可能性もあるなという推測ができるため、税務調査の対象となるのです。 このままではバレてしまうと考えたAさんは、慌てて貸金庫の中にある7,000万円をリュックサックに入れて自宅の押し入れに隠しました。
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