あと26時間の命と知った特攻隊長「人間その境遇になれば誰でもこんな心境に」~28歳の青年はなぜ戦争犯罪人となったのか【連載:あるBC級戦犯の遺書】#65
仏を求め暗黒を彷徨った
<幕田稔の遺書(昨日今日の日記)> 一昨年九月頃から昨年五月二十五日まで、真に寝食を忘れ、起きて考え、寝て考え、飯を食いつつ考えたものです。それも田島先生(田嶋隆純教誨師)が未だ来られなかったので岡田氏(東海軍司令官岡田資中将)の一週間一遍の話を聞くほかは、全く独力で考えました。そして五里霧中の暗黒を、仏を求めて彷徨いつづけました。そして最后に全く思いがけなく出た究極の結論が、前に述べた唯の七語だったのです。自己の内なる暗黒の欲望や、盲目の衝動と血みどろになって闘い続けたのでした。 〈写真:教誨師の田嶋隆純〉 幕田は”悟りをひらいた”過程までを家族に説明したあと、弟や妹へ、人生の先輩として遺す言葉を書き始めたー。 (エピソード66に続く) *本エピソードは第65話です。
連載:【あるBC級戦犯の遺書】28歳の青年・藤中松雄はなぜ戦争犯罪人となったのか
1950年4月7日に執行されたスガモプリズン最後の死刑。福岡県出身の藤中松雄はBC級戦犯として28歳で命を奪われた。なぜ松雄は戦犯となったのか。松雄が関わった米兵の捕虜殺害事件、「石垣島事件」や横浜裁判の経過、スガモプリズンの日々を、日本とアメリカに残る公文書や松雄自身が記した遺書、手紙などの資料から読み解いていく。 筆者:大村由紀子 RKB毎日放送 ディレクター 1989年入社 司法、戦争等をテーマにしたドキュメンタリーを制作。2021年「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」(テレビ・ラジオ)で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞審査委員特別賞、放送文化基金賞優秀賞、独・ワールドメディアフェスティバル銀賞などを受賞。