三宅一生との対話から誕生した“茶室”のような彫刻 「六本木六軒:ミケーレ・デ・ルッキの6つの家」が開幕
イタリアを代表する建築家兼デザイナーであるミケーレ・デ・ルッキ(Michele De Lucchi)の展覧会「六本木六軒:ミケーレ・デ・ルッキの6つの家」が9月20日~10月14日、東京・六本木の「21_21 デザインサイト ギャラリー3(21_21 DESIGN SIGHT GALLERY 3)以下、デザインサイト」で開催される。同展は2018年のデ・ルッキと三宅一生の対話から生まれた。デ・ルッキは1970~80年に前衛的なデザイナー集団「アルキミア」や「メンフィス」の中心的な存在で、その型にはまらないクリエイションへのアプローチは三宅との共通点でもあった。三宅との対話をもとにデ・ルッキは、「デザインサイト」の空間のために、6つの住宅(セイ カーゼ)の模型を制作。展覧会名の「六本木六軒」は、会場のある六本木の地名がかつて存在した6軒の武家屋敷に由来している。
まるで茶室のような光を通し、呼吸する彫刻
木製3点とブロンズ製3点の彫刻作品は、“ロッジア”(イタリア語で“涼み廊下”)と名付けられた彫刻シリーズの一環で、デ・ルッキによる“間(あわい)の空間”の探求が表現されている。“間”とは、家の中と外をつなぐ空間で、内で営まれる生活と外の環境が融合する場のこと。日本家屋の障子とヨーロッパの住居の窓枠を想起させる要素が盛り込まれ、外界との仕切りがありながらも、光を通し、呼吸するような作品になっている。会場では、映像作家のヴィクトル・コサコフスキー監督が捉えた制作過程の映像も公開。
オープニングのために来日したデ・ルッキは、「イタリアには永遠を象徴するルネサンス、日本には過ぎゆくものの美を表すワビサビがある。6つのロッジアは、イタリアと日本、そして、家の外と中の架け橋になればと思って制作した」とコメントしている。木製の彫刻は、デ・ルッキが一つ一つ手仕事で仕上げ、ブロンズは鋳型をつくり職人が仕上げた。木とブロンズの味わいのある表情と透過性のある構造の彫刻は、まるで小さな茶室のよう。イタリア人が彫刻で表現した“ワビサビ”の小宇宙は必見だ。9月21日には、デ・ルッキによるギャラリートーク「LET’S BE HAPPY」が開催される。