ネイルチップの革命で流行が変わるか?女性社長の思い
自販機のジュースも買えなかった
──離婚を機に大変苦労をされたとか? 伊與田:独立後、普通に女性の幸せを掴むということで、結婚をしたけど、1年半で離婚。そこから人生の急転落が始まりました。離婚してお金の面も厳しかった。1歳半の子を抱えながら、自分でどう1人で食べさせていくか。明日の生活のこともあるし、テキメン、現れたのが経済力です。フリーランスだから、“一馬力”で仕事をして、必死でもがいて、生活のためにやってたんですけど。やっぱり毎日張り詰めてますよね、なので、ある時にぷつっと糸が切れちゃった。 ──自販機のジュースを購入するお金がなかった? 伊與田:厳しい状況のなか、今でも忘れられない出来事が起こったんです。1歳半の子どもを散歩させている時、手をつないで歩いてて、子どもが喉が渇いたって、「ママ、ジュース買って」って言われたんですよ。自販機の前で「うん、買ってあげるよ」って、財布を開いた。全財産がほんとに100円玉1つと1円玉3つしかなく、その時に、私、ここまで苦しくなってしまったのかと、現実を目の当たりにしたんですよね。自販機のジュースは110円ですから。 その瞬間、彼女の張り詰めた気持ちが臨界点を超え、一気に無気力になった。精神も病んでいたため、「死」についても考えた。親にも迷惑をかけたくはなかった。「この子を置いて死ぬのは無理だし、寝てる時に先にこの子を…って、そういうことばかり考えるんです」と、当時を振り返る。だが、ここでまた意識の変化が起こったという。
自分の人生と向き合い、腹が据わった
──娘さんのために覚悟を決めた? 伊與田:ほんとに苦しかった。最終的に自分だけ死のうと決断した。でも、もう1人の自分がいて、死ぬ覚悟があるんだったら、もう1回、死ぬ気でやってみて。それでダメだったら、その時に考えたらいいんじゃないって、もう1人の自分が出てきたんです。だからこの子のためにやってみようって。その時初めて私自身が自分の人生と向き合い、腹が据わったんですよ。 そこから、これまで何となく人生を歩んでいたのに、自分の足で確実に真剣に歩み始めた。そうなると、周りの状況も変わっていった。小川会長との再びの巡り合い(8年後)も転機となった。彼女が自分と対面し、もう一度仕事を頑張ろうと思っている時だ。彼女は結婚前に小川会長と出会い、フラワー制作を手がけたことがあったのだが、小川会長も彼女を記憶に留めており、「君、こんなんできるん違う?」って、「社長をやってみたらどうや?」って言われたという。 ──小川会長との再会でネイルビジネスを始めたんですね。 伊與田:小川は下着の会社を経営しているんで、今のジュネルをつくる前の段階で、「ネイルの類似商品のワンタッチ商品の代理店をしてみたら、こんな商材がありますよ」って小川に伝えたんです。そしたら、それ、おもしろいなって。下着につなげるための入口商材としてネイルを取り入れたらいいねと言うことで、ワンタッチネイルをやり始めたんです。そしたら、あれよあれよと言う間に販売実績が上がった。私、自分の中では、モノを売るということは苦手意識があったんです。もともと職人なので。ですけど、販売してると、勝手に売れていく。看護師さんとか泣いて喜ぶ人もいてたり、女性の心が開放されていくようなシチュエーションがすごく多かった。ネイルって素晴らしいなって思ったのと、この画期的なつけ爪にはビジネスの可能性がすごく眠っていることに気づいた。