《追悼》「お前すっかりドラえもんになっちゃってるよ」大山のぶ代と夫・砂川啓介の夫婦ゲンカが46歳でピタッとやんだ“特殊すぎる理由”
ドラえもんの声や女優・タレントとして知られる大山のぶ代さんが9月29日に亡くなった。90歳、死因は老衰だった。40代以上の方なら「ぼくドラえもん」という大山さんの声を知らない人はいないだろう。 【生前の貴重グラビア】認知症になった大山のぶ代さん(90歳)とパートナーの「仲良しツーショット」(写真多数) 大山さんは芸能界きってのおしどり夫婦として知られ、夫は俳優、タレントとして活躍した砂川啓介さん。NHK『おかあさんといっしょ』の初代「たいそうのおにいさん」であり、『超人バロム・1』(72年)の松おじであり、『お昼のワイドショー』の司会の人だった。 晩年はアルツハイマー型認知症を患った大山さんを、砂川さんは長らく介護していたが、妻よりも早い2017年7月11日に80歳でがんで亡くなっている。砂川さんは生前、大山さんとの夫婦関係についてよく話していた。
「2人でケンカしているといつの間にか…」
2人のなれそめは有名だ。まだ交際も始まっていない時期に、ドライブに出かけた2人は不良たちに絡まれている少年を見かけた。それを見た2人は即興で若い夫婦を演じ、田舎から出てきて道がわからないという設定で少年に道を尋ねまくり、そのまま逃がしてあげたという。その体験から砂川さんは「実生活でもエチュード(即興芝居)ができるんじゃあ……」と、それまで互いに考えてもみなかった結婚を考えるようになったという。 大山さんが34歳、砂川さん30歳の時に2人は結婚したが、大山さんが46歳でドラえもんを演じるようになってからは、夫婦ゲンカがピタッとやんだという。 「2人でケンカしているといつの間にか、彼女の声がドラえもんになっちゃうんですよ。そこで我に返って『おいおい、ちょっと待てよ。お前すっかりドラえもんになっちゃってるよ。ドラえもんとケンカしたってしょうがない。やめようや』と言うと『そうね』となってすぐに終わっちゃうんです」 そう語る砂川さんは、嬉しそうに照れ笑いを浮かべていた。
『ドラえもん』役を得てからの大山さんはまさに国民的な存在で、テレビ出演も増えていった。『ドラえもん』と同じテレビ朝日で毎週日曜日のお昼に放送されていた『大正週間漫画 ゲラゲラ45』では、小料理屋の女将をアフロヘアーで演じた。 そこで大山さんは意外な(?)料理の腕前を披露し、毎週繰り出される気の利いたお通しが話題になり、レシピ本まで出版している。表紙は藤子・F・不二雄先生の描き下ろしである。 ある日曜日、大山さんと砂川さんが2人でその番組を見たことがあり、砂川さんは驚いたという。 「おい、なんだよこんなシャレたつまみが作れるのかよ!? うちじゃあこんなうまそうな料理を出してくれたことがないじゃんか。ベンジャミン伊東(大山さんの小料理屋に通うサラリーマンを演じた伊東四朗)にばっかこんなうまそうなもん喰わせやがって!」 そう言うと、大山さんは「わかったわよ。今度作ってあげるから」と答えたという。 「そんなこと言って結局とうとうテレビと同じメニューは作ってはくれなかったんですけどね。その代わりもっと美味しい酒の肴を作ってくれました」(砂川さん)