日本、5カ国目の月面着陸に成功 実証機「スリム」太陽電池は働かず
実証機「スリム」が20日午前零時20分、月面への着陸に成功した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表した。日本の月面着陸は史上初で、旧ソ連、米国、中国、インドに続き5カ国目。独自技術で目指した、史上最小100メートル級の位置誤差の「ピンポイント着陸」も達成した模様だ。ただ着陸後に機体の太陽電池で発電できず、月面での活動時間が大幅に短縮する恐れがある。着陸した姿勢が計画通りにならず、太陽光が当たらなかったため。日本の科学技術史に残る一大成果となり、宇宙技術を世界に示したものの“ほろ苦さ”を帯びた月面デビューとなった。
ピンポイント着陸「ほぼ確実に成功」
スリムは昨年9月7日に地球を出発。JAXAの発表や中継されたデータによると、先月25日に月周回軌道に投入され、段階的に軌道を変更し高度を下げた。今月20日午前零時、月の高度15キロあまりから減速して降下。月面を撮影してクレーターの地図と照合し、機体の位置や高度を逐次、把握する「画像照合航法」で移動した。同16分頃、着陸地点上空の高度6キロ付近から垂直に降下を開始。月面の低緯度の平原「神酒(みき)の海」にある「シオリクレーター」付近の、半径100メートルの円内の傾斜地を目指し、同20分に着陸した。
着陸後に地上との通信は確立したものの、太陽電池が発電しなかった。そのため搭載したバッテリーのみを電源とし、降下中や着陸後のデータを地上へ送信した。データを詳しく検証する。月面での活動は数日を計画していたが、バッテリー寿命が近づいたため午前3時頃、電源を切ったという。 管制室のあるJAXA宇宙科学研究所(相模原市中央区)で20日未明に会見した國中均所長は「残された時間で(発電の)手立てを打つより、現状を維持して地上にデータを送信し、科学的成果を最大化することを考えたい」と説明した。JAXAは22日、分析の結果、電池が太陽光と反対の西を向いていることが分かったと発表した。今後、太陽光が西から当たるようになれば、発電して活動を再開できる可能性があり、準備を進めるという。