なぜパリ五輪で鏡優翔は浜口京子氏も超えられなかった“女子最重量級の壁”を破る歴史的金メダルを獲得できたのか…元金メダリストが解説
パリ五輪の女子レスリング76キロ級の決勝が11日、シャンドマルス・アリーナで行われ鏡優翔(かがみ・ゆうか、22、サントリー)がケネディアレクシス・ブレーデス(20、米国)を3-1で破り初出場で金メダルを獲得した。女子の最重量級では日本人初の快挙で、2004年アテネ、2008年北京五輪で銅メダルの浜口京子氏が超えられなかった壁を越えた。なぜ鏡は歴史的快挙を成し遂げることができたのか。 【画像】史上最強のSEXYクイーンら4人の“美ボディ”ラウンドガールが世界戦に登場!
日本女子レスリング界に新しい歴史を刻んだ。今大会で大躍進を遂げた日本レスリング勢8個目の金メダルは、さらに価値ある輝きを放つ。これまで五輪で一度も決勝戦へ進めなかった女子の最重量級の76キロ級で鏡が世界の頂点に立った。 決勝直後のインタビューで鏡もそれを意識していたことを認めている。 「ずっと目指してきた、誰も成し遂げたことがないことを、私がこの手でつかんだのが本当に嬉しいですし、今までやってきたこと、今までやってきた選択の答え合わせがここでできたかなと思います」 決勝戦は厳しい接戦だった。 消極的だった相手のアクティビティタイムで先に1ポイントを取った。だが、その直後、タックルを仕掛けられた鏡は、素早く対応したが場外に押し出されて1-1の同点となった。勝負の第2ピリオド。このまま時間切れとなると後からポイントを取った20歳の米国人の勝利となる。残り1分半を切ったところで、鏡が場外際で左足に強烈なタックル。抱えるような体勢から場外に押し出して逆転の2ポイントに結びつけた。鏡はブレーデズを押さえつけたまま反撃を許さず勝利のカウントダウンを聞いた。 ソウル五輪フリースタイル48キロ級の金メダリストの小林孝至氏は、勝負を決めたタックルに鏡の強さの秘密があると分析した。 「あのタックルは怖いですね。入る回数はそんなにないけれど成功率がとても高い。その確率の高さから相手が警戒するので、フェイントをかける効果もあがる。鏡選手にとってよい循環になって、タックルはますます成功するようになります」 そしてこう続けた。 「レスリングのオーソドックスな攻め方としては、タックルをしたら自分の手で相手の足を引きつけ、マットの真ん中でテイクダウン、そこからグラウンド技を続けるというものです。そのときいったん足を止めて倒そうとするので同時に隙ができ、逆に技を返されて失点したりします。ところが鏡選手は、マットの真ん中でタックルを終えない。腕で相手の足をつかんでも引き寄せるより添えるくらいにして、自分の足を止めずに場外へそのまま押し出す。大きな点数は入りにくいですが、確実に点を取ります。たとえ1点でも必ずタックルを成功させて得点するから怖いのです」 鏡はまさにコツコツとしたレスリングで決勝へ駒を進めていた。 1回戦はレアスコバルデス(エクアドル)に2―0、準々決勝はアダルイイト(トルコ)に3-0、準決勝ではレンテリア(コロンビア)に4-2、そして決勝はブレーデズ(米国)に3-1の判定勝ち。圧勝はなく地味な勝利にうつるだろう。だが、これこそが鏡の強さの理由だった。
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