なぜパリ五輪で鏡優翔は浜口京子氏も超えられなかった“女子最重量級の壁”を破る歴史的金メダルを獲得できたのか…元金メダリストが解説
一方カナダやアメリカでは、以前からローカルルールで女子の試合でも80キロ級というカテゴリを設けて大会を実施するなど大きな体格の選手が日本よりも多い。国家主導で取り組むスポーツを指定している中国も、14億人以上の人口を背景に国内大会では一階級あたり、日本の十倍の選手が出場してくるので練習パートナー探しに苦労するようなことはない。 そのギャップを埋めるため日本の最重量級はこれまで色々な試みをしてきた。 浜口氏は、筋力を高めることでパワーの落差を埋めようと心掛けた。2019年世界選手権2位、東京五輪5位の皆川博恵は、単独での海外遠征を積極的に実施して最重量級の国際試合の流儀を学んで乗りこなそうとした。だが、壁に阻まれた。 鏡は、「先輩方が女子レスリングをずっと作ってくれて今があると思うので、本当に感謝しています」という話をしていた。先達の経験から学び、あえて、世界の最重量級の流儀に相反する手法を編み出して悲願の金メダルを手にした。 「勝利の方程式を描ききっていることが五輪金を引き寄せたのだろう」と小林氏は言う。 大好きなひまわりのような笑顔を振りまいていた鏡がメダル授与式では涙を流した。 「この瞬間までつらいことがたくさんあって、怪我もたくさんしましたし、辛いことを思い出して、やっとつかみ取った金メダルなので、涙が止まらなかったです」 そして再び「最高、幸せ、もうなんて言うんですか、幸せです」と、真夏の日差しがよく似合う笑顔に戻った。
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