マスク氏、次期米政権のロボタクシー規制緩和に意欲
州の記録によると、テスラは16年以降わずか900キロメートルのテスト走行しかしておらず、19年以降、州規制当局に報告書を提出していない。 対照的に、米グーグル系の米ウェイモはその2万3000倍の2100万キロメートル以上のテスト走行を行い、14年から23年にかけて7つの認可を取得。23年にはロボタクシーで乗車料金を徴収できる認可を得た。 ウェイモは先ごろ、カリフォルニア州ロサンゼルスで運転手が乗らないロボタクシーサービス「Waymo One」の一般提供を始めた。ウェイモが現在、自動運転技術による旅客輸送サービスを展開している都市は、ロサンゼルスのほか、同じ西部カリフォルニア州のサンフランシスコと南西部アリゾナ州フェニックスである。サンフランシスコ都市圏では高速道路での走行試験も始まった。同社は24年8月、これら都市圏における利用客を2倍に増やすことに成功したと発表していた。 ■ テスラは無人走行の許可を得ていない ロイター通信によると、テスラは現在、カリフォルニア州で最も低いレベルの許可しか持っていない。これは人間のドライバーによる監視下でテスト走行が許されるものだ。一方、すでに無人のテスト走行許可を取得した他の6社は、その許可を取得する前に最低3年間、数百万キロメートルにわたるドライバー乗車のテスト走行を行っていた。例えば、米アマゾン・ドット・コム傘下の米ズークス(Zoox)は3年間で260万キロメートル以上の、米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の米GMクルーズは5年間で340万キロメートル以上の走行実績がある。 米カーネギーメロン大学の教授であり、自動運転車の専門家であるフィル・クープマン氏は、「テスラは、その道のりをすべて経験しなければならない」と指摘する。 ■ トランプ氏の勝利後にテスラ株上昇 テスラが24年10月にサイバーキャブを発表した翌日、同社株は9%下落した。発表会で自動運転に関するより詳細な事業計画や業績目標が示されず、投資家を大きく失望させたといわれている。一方、マスク氏が支持するトランプ氏が大統領選で勝利して以降、テスラ株は上昇した。投資家は自動運転とAIに関して、テスラにとって好都合となるような規制緩和を期待しているようだ。 同社は10月のイベントで、高度運転支援システム「フルセルフドライビング(FSD)」をさらに高度に進化させ、人間が介在しなくとも走行できるシステムを、「モデル3」と「モデルY」に搭載すると発表した。サイバーキャブの生産開始より前の25年にもカリフォルニア州と米南部テキサス州で、進化版FSDを稼働させたい考えだ。
小久保 重信