WHO総会にオブザーバーでも招待されない台湾 コロナ対応の知見共有できず
台湾のオブザーバー参加を求めるべき
報道によれば、米国と日本の主導の下、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドが台湾のオブザーバー参加を求める意向をWHOに口頭で伝えたとされています(台北中央社5月11日付。カナダの報道を引用)。日本政府は公表していませんが、それが事実であれば積極的に評価できます。 中国との関係を考えると注意が必要ですが、日本政府はかねてから台湾のWHOへのオブザーバー参加に賛成しており、米国のトランプ政権と協力して各国とともに申し入れを行ったのでしょう。 中国はこれに反発し、参加した各国を非難したようです。これに関し、ニュージーランドのピーターズ外相は12日、あらためて今回の新型コロナウイルス問題への台湾の対応を称賛し、他国は台湾から多くのことを学ぶことができると指摘しました。その後、同じくニュージーランドのアーダーン首相は、台湾をめぐる自国の立場は新型コロナウイルスへの公衆衛生上の対応のみに関連していると強調し、「われわれは常に『1つの中国』を支持する立場をとってきた。この立場に変わりはない」と述べました。台湾のWHO総会へのオブザーバー参加に政治的意図はないことを明確にしたこの姿勢は高く評価されるでしょう。 18日に開催されるWHO総会において、日本は各国とともに、できるだけ感染症対策における技術的、専門的な観点から、WHOは台湾のオブザーバー参加を認めるべきだと発言することが望まれます。各国と共同で声明を出すのも一案です。その際、必要であれば、日本は「台湾は中国の一部であるという中国の立場を理解・尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と表明し、日本は何も変わっていないことを再確認することももちろん考えられます。
------------------------------------ ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹