東京都知事選挙“告示前の演説”はどこからが「事前運動」にあたる? 選挙実務に精通した弁護士が解説
専門家ですら判断に悩む「事前運動」の該当性
三葛弁護士は、市議会議員及び国会議員政策担当秘書の20年以上の経歴をもち、選挙実務・議員法務の経験が豊富な筋金入りの専門家である。 その三葛弁護士をもってしても、公職選挙法129条が禁じる事前運動すなわち「立候補届け出前の選挙運動」に該当するかどうかの判断は悩ましく、困難であるという。 三葛弁護士:「選挙に関連して、どんな行為がどこまで許されるのかということは、必ずしも明確になっているとはいえず、かなり『ケースバイケース』です。 時代や地域差もかなりあるばかりか、激戦の注目選挙区であるのか、候補者が法律の専門家であるのか、他に違法行為が指摘されているかどうか、背景にお金の問題が絡みうるのか、など総合的かつ立体的に考える必要があります。 あとから『あれはアウトだった』と言われかねないため、常にリスクを抱える状態です。 もしも判断に迷った場合には、選挙実務に通じた弁護士に相談することをおすすめします」 公職選挙法が定める事前運動の規制は、選挙の平等・公正を実現するために不可欠なものである。しかし、その解釈適用が恣意的に行われると、結果的に「政治活動の自由」への萎縮効果をもたらし、健全な民主主義の発展・成熟が阻害されるおそれがあることを忘れてはならない。 このことは、戦前に往々にして行われた官憲による露骨な選挙干渉の例をみるまでもなく明らかである。 選挙活動の自由に関連する言論は、それを発する側と受け取る側のいずれも、有権者としての責任を自覚し、慎重を期する必要があるといえよう。
弁護士JP編集部