スペイン料理に注目~「スぺめし」の可能性を探る
スペイン料理がもつ「スぺめし」の特徴と今への訴求
そんな経緯がありつつ、スペイン料理が今、活発化している。東京「La Coquina cerveceria」(渋谷)、「メソン・セルバンテス」(麹町)、大阪の「エチョラ」、「BANDA」など人気店は連日にぎわっている。どの店にも共通して現代に受ける要素が多々盛り込まれていると感じている。 いわゆる「スぺめし」といえそうな店だ。コース料理の決め事があまりなく、アラカルト料理が充実している点も、時流に合っている。コロナ禍以降、サクッと外食して帰宅する人や軽く飲んで帰宅するケースが増え、「気軽、手軽」も外食選びのポイントの1つとなっている。
料理からみるスペイン料理の強み
また、アラカルトで注文しやすい雰囲気は、1人客も入店しやすい。最近は、1人前の量のパエリアを提供している店も増えている。ピンチョスなどの前菜からパエリアなどお腹にたまる料理までそろうので、さまざまなニーズに対応しやすく定食屋のような使い方から仲間うちのパーティーまで幅広く使い勝手が良い。 客平均単価も5000円を下回ることがほとんどだ。家庭料理の代わりにもなり外向きの要素もあるちょうど良いバランスが「無理しない生き方」を求める現代に合っているのではないか。 スペイン料理が今後期待される要因は料理からも見られる。日本でもおにぎりブームや小麦粉の高騰もあり、米飯が見直されつつあり、コメ料理があり、魚介類も豊富な点はなじみやすい。また、強い辛味や強い香辛料が少ないので日本人にとって食べやすさもあるだろう。 加えて店舗は地中海をイメージした内装や明るい雰囲気の店が多く、料理の色彩が豊かで全体的に明るい雰囲気がある。将来に不安を抱える人が多い現代において、ストレスオフをさせるにはちょうど良い軽快さが備わっていると感じる。重々しくないバランス感が強みなのだと思う。 (食の総合コンサルタント 小倉朋子)
日本食糧新聞社