スペイン料理に注目~「スぺめし」の可能性を探る
「イタめし」という言葉が流行ったのは何年前だろうか。「イタめし」はイタリアンを「めし」というワードによってさらに身近で気軽に立ち寄れる印象に広げたといえる。大衆的でありながら、それでいてオシャレ感も損なわないイメージになるのが「めし」というワードだと感じる。 最近、スペイン料理店が元気だ。都内の人気店は常ににぎわっている。2月には東京丸の内に地中海スパニッシュ料理「スペメシ Leon」がオープンしたが、今後は「イタめし」よろしくスペイン料理もスパニッシュに「スぺめし」が加わり、より大衆化していくのだろうか。
意外に知られていないトレンド~単体でトレンドになっていたスペイン料理
スペイン料理といえば、日本人の大半が「パエリア」を思い浮かべるのではないだろうか。その他の料理を問われると即座に浮かばない人も少なくないだろう。しかし今までもスペイン料理は何度もトレンドになっている。トマトや玉ネギ、キュウリ、ピーマンなどを加えた冷製スープの「ガスパチョ」、小さな料理をピン(串)に刺した「ピンチョス」、「バスクチーズケーキ」は大流行してコンビニ各社でも販売した。オリーブオイルとニンニクで食材を煮込んだ「アヒージョ」も、飲食店やスーパーでもみかけるようになり、パーティーなどでは欠かせないアイテムの1つとなった。 また、トレンドとしては強くはないが、すでに日本の食生活の中に入り込んでいる料理もある。例えば細長いドーナツのような「チュロス」は、原宿など若者の街では以前から定番のアイテムとして珍しくないが、スペインが発祥であることはあまり知られていない。そのほか、「トルティージャ」は、スペイン風オムレツとも称されるので、正式名を知らなくてもジャガイモを入れたボリューム感のあるオムレツとして手作りする人もいる。 ざっと挙げてもこれだけあるのだ。ただ、トレンドになる時期はそれぞれ違い、スペイン料理全体としてとらえられてはこなかった。また、例えばティラミスはイタリアのスイーツだと認識されているが、バスクチーズケーキは「バスク地方のケーキ」とは思われていても「バスクはどこの国か」知らない人も少なくないし、アヒージョはイタリア料理だと思っている人もいる。オリーブオイルを使うのはイタリアンという固定化したイメージが強いのだと推察する。 今1つ、スペイン料理としてのまとまりが弱かったのは拭えない。それは、コース料理が確立されていないことも要因の1つと筆者は考えている。単品メニューだけだと、どうしても分断して思考しやすくなるのだ。