グリーン×半導体 最先端半導体製造と環境負荷低減目指す
生成AI(人工知能)の普及拡大や自動運転の実現に向け、最先端半導体の技術開発が進んでいる。回路線幅の微細化に加え、チップレットや3次元実装などの先進パッケージングにおいても技術進展が進む。最先端の技術開発が進む一方、半導体デバイスの高度化とともに製造工程は複雑化し、環境への影響も懸念されている。そうした中、新たな技術により最先端半導体の製造と環境負荷低減を目指す取り組みが始まっている。 今月11~13日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された半導体製造に関する展示会「セミコンジャパン2024」。東京エレクトロンは、半導体の高度化を支えデジタル化を後押しするとともに、環境負荷低減に貢献する「デジタル×グリーン」のコンセプトを掲げ、最新技術とソリューションを提案した。今月初旬に発売した300ミリメートルウエハー接合デバイス向けレーザー剝離装置「Ulucus LX」もパネル展示。最先端の先進パッケージ技術を支え、環境負荷低減にも貢献できる装置として注目を集めた。 レーザーでシリコンウエハーを薄化 同製品は独自のレーザー剝離技術「エクストリーム・レーザー・リフト・オフ(XLO)」を備え、レーザー照射・ウエハー分離・洗浄の加工を一台で完結できる装置。XLO技術はウエハー薄化工程において、集積回路層を形成したウエハー同士を貼り合わせた基板をレーザーで分離する技術だ。 先進パッケージの技術開発が加速する中、ウエハー永久接合技術を用いた3次元実装は半導体デバイスの進化に欠かせない。従来、ウエハー永久接合工程は2枚のシリコンウエハーを永久接合した後、研削加工により上部のシリコンウエハーを薄化・除去している。しかし、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて、研削加工後の膜剝がれやエッジトリミング領域の拡大による生産チップ数減少など、歩留まり低下が懸念されていた。また、表裏研削工程で使用する純水および廃水も増えるなどの課題もあった。 純水使用量90%以上削減 Ulucus LXを用いることで従来の研削工程やトリミング工程が不要となる。研削工程で使用する純水使用量も90%以上削減でき、研削くずを含んだ汚水処理も不要となるため、環境負荷低減や資源の節減につながる。レーザーで剝離したウエハーの再利用も視野に入れており、サステナブルな半導体製造を目指す。 同社ではこれまで、ウエハーエッジトリミング装置「Ulucus L」を用いたXLO技術を提案していた。Ulucus LXはウエハーの剝離のみならず、洗浄まで一気通貫で行うことができる。 最先端半導体の製造を実現するため、高度化・複雑化している半導体製造工程。工程数の増加やそれに伴う歩留まり低下など課題は多い。そして、環境負荷低減も大きなテーマとなる。水や電力の消費量削減や温室効果ガスの低減にも目を向けながら、半導体の進化に期待したい。
電波新聞社