「介護の始まりは自覚がないことも…」母の介護を経験した書店員がおすすめする「介護やケアの入り口で役立つ本3選」
老いていく親と接していると、「これは介護なの?」と感じることも…。母親の介護経験から、現在は介護に役立つ本を中心に扱う「はるから書店」の店主、小黒悠さんは、「介護が始まったことに気がついていなかった」という。初めての介護に備え、心がわやらぐ3冊の本を教えてくれた。 【画像】オンライン書店「はるから書店」を運営している小黒悠さん
教えてくれた人/小黒悠さん
元図書館司書。20代から母のケアを経験し、ケアする人を「ケアする本屋」を目指し、オンライン書店「はるから書店」を運営。ライターとしても活動中。https://harukara-reading.stores.jp/
27才のときから母の介護を経験
はじめまして! ケアする本屋「はるから書店」店主の小黒です。介護に「やくだつ本」と、気持ちの「やわらぐ本」をセレクトしています。元・図書館司書で、今は会社員として働きながら、オンライン書店を運営しています。 私は27才のときから6年と8か月、母の介護をしていました。脳梗塞になった母は半身に軽い麻痺があり、そのあと別の病気も患って、生活する上での困りごとが色々とありました。食事の用意や着替え、入浴の手伝い、通院の付き添い。幸い歩くことができたのである程度の時間はひとりでも過ごすことができ、私は働きながら在宅介護という形をとっていました。 ――のですが、実は私、自分のしていることが「介護」だと、しばらくの間気付いていなかったんです。 思い返せば初めての脳梗塞で入院し、いよいよ退院間近という頃、母のリハビリを担当していた理学療法士さんからこんなことを聞かれました。 「介護サービスの申請は出されるんですか?」と。思わず顔を見合わせる母と娘。 娘27才、介護サービスの「か」の字も知りません。 母60才、幸か不幸か既に他界していた母の両親は、どちらも介護を要する期間がほとんどありませんでした。 介護が何たるかを知らない私(及び母)は、「大丈夫じゃない?」「何とかなるでしょう」と軽やかに返答。その後、私たち親子に介護について説明をしてくれる人は誰もいませんでした。 入院した当初は歩くのもフラフラ、顔が硬直してろれつが回らず、口にした食べ物はほとんどこぼしてしまう状態の母でしたが、半日に及ぶ長時間の手術と、数週間のリハビリを乗り越え、杖を使って歩き、ゆっくり食事をし、親子の会話のテンポも戻ってきていました。 毎日「早く退院したい」「家に帰りたい」と口にする母と同様に、思いがけず生まれて初めてのひとり暮らしを経験中だった私も「早く帰ってきてほしい」と考えていました。母と父は離婚しており、私と母はふたりきりの家族だったのです。 お見舞いに行くたびに、めきめき回復していく母に接し、当時の私は、これからの未来が希望に満ちた明るいものとしか思えていませんでした。 介護って、どこからが介護なのでしょうか。 私は、介護=常に誰かの手助けが必要な状態なのだと思っていました。歩けない、ひとりでトイレに行かれない、意思疎通ができないなど、もっと深刻な状況だと思っていたんです。 でも実際は違うんですよね。介護ってもっと手前の段階から始まっています。母の退院翌日、仕事から帰宅した私は気が付きました。 「あれ? この生活、もしかしてちょっと大変かもしれない」 そこで、「もしかして、介護が始まった?」をテーマに私がおすすめしたい本を選んでみました。介護やケアの入り口で、きっと役立つ、そして気持ちのやわらぐ3冊です。