「あれ、使いもんにならん。ニセモンや」“紀州のドン・ファン殺人公判” 覚醒剤密売人と接触した須藤早貴(28)が中学生時代に受けていた“特別授業”「マジなの?」
「使いものにならん。ニセモノや」
須藤が「裏2ちゃんねる」に載っていた密売人の連絡先に電話をしたのは、4月7日19時16分のこと。和歌山県田辺市の路上で受け渡しをしたAと、トバシの携帯電話で注文を受けたBの密売人2人は、ともに検察側の証人として法廷に立っている( #6 )。 以降の取引状況は、金額や量に認識の違いはあるものの、AやBの法廷証言ともほぼ一致。須藤は日付が変わった4月8時の午前0時過ぎ、田辺市内の路地でAから“注文の品”を受け取った。ただし、Aは法廷で「本物の覚醒剤を売った」と言い、Bは「氷砂糖を砕いた偽物だった」と証言は食い違う。 「帰宅して、受け取った封筒の中を見ると、ティッシュの塊があり、開いたらビニール袋の中に透明な結晶が入っていました。社長は寝ている時間ですし、とりあえず私も寝ました。その封筒は起きて夕方くらいに社長に渡しました。2階の社長の部屋で2人だけの時です。社長は『ありがとうございます』と言って受け取りました」(同前) 翌日4月9日の夕食の時。 「社長から『あれ、使いもんにならん。ニセモンや。もうお前には頼まん』と言われました。X子さんの調書を見ると、社長が覚醒剤をやっているんだと言っていたみたいで、それがだいたい同じ時期でした」(同前) それ以降、野崎氏から覚醒剤の話をされたことはないという。 また、須藤は、5月6日に野崎氏が溺愛していた愛犬イブが死んだ時から、本人の様子がおかしくなったとも証言した。
「自分も死んでしまいたい」と漏らすようになり…
「社長はイブちゃんが死んでから、『自分も死んでしまいたい』と話すようになりました。最初は私にかまってほしくて言っているんじゃないかと思いましたが、泣きながら言っていることもあったので、本気かなと思い始めました。ネットで『死にたいと言っている人への対応』を調べたりしました。 亡くなった日も、『老人 頭がおかしい』とか『老人性鬱ってどんな病気』と検索しました。調べた結果、長年飼っていたペットが死ぬと、老人性鬱になることがあると知りました。社長の感情の浮き沈みが激しいのはこれか、と思いました」(同前) 確かなのは、野崎氏が致死量の覚醒剤を何らかのかたちで経口摂取したことにより、急性覚醒剤中毒で死亡した事実。 「検察側は冒頭陳述で『自殺や事故の可能性はない』とし、これまでの証人尋問を通して野崎氏に自殺の兆候がなかったことや、覚醒剤に手を出すような人物ではないことを強調しています。当日、野崎氏に覚醒剤を摂取させることができたのは、須藤被告以外におらず、動機もあると。 一方、否認する須藤被告は、野崎氏本人が覚醒剤に関心を持っていたことを証言。弁護側は、野崎氏自ら使用したことによる自殺や事故死の可能性も完全に打ち消せていないことを強調したいものと思われます」(司法担当記者) 須藤は弁護側の質問を通して、「覚醒剤 過剰摂取」「覚醒剤 死亡」などと検索した履歴があるのは、野崎氏から覚醒剤の購入を頼まれて調べた結果、関連ワードとして登場した動画を視聴したからだと主張。だが、覚醒剤購入前の時点で「老人 完全犯罪」「トリカブト殺人事件」などの言葉を検索していた事実には触れていない。 3期日にわたって行われる被告人質問は、11月11日、15日と続く。弁護側の質問が終われば、「被告は野崎氏の莫大な財産を目当てに結婚し、覚醒剤を使って完全犯罪を行った」と見なす検察側のターンに。注目の公判は、最大の山場を迎えている。
「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル