錦織圭と国枝慎吾が描くジュニア育成の未来図。日本テニス界のレジェンドが伝授した強さの真髄とは?
「メンタルはテクニック」。反復練習がもたらした成果
国枝氏は、一般的に言われる「メンタルの強い、弱い」のような概念に対し、心の有り様や考え方は、反復練習によって習得できる「テクニック」だと明言する。 座学後に個別に話を伺った時、国枝氏は次のように詳細に語ってくれた。 「僕も(メンタル・トレーナーの)アン・クインさんのセミナーを最初に受けた時は、『俺はメンタルが弱いわけじゃないから、こういうの必要ないんじゃないかな』って思ったんですよ。でも色んな方法を教わるなかで、自分にハマるものとハマらないものが当然ながらあった。瞑想とかはダメだったんです、逆に雑念ばかり浮かんじゃって(笑)。でも“アファメーション(affirmation=自己肯定)”と“セルフトーク”、そして“ルーティン”の3つはすごく自分に合ってて、試合中も使いまくってました。 これらも、練習するんです。ルーティンも、サーブのトスの前に何回ボールをつくと決めたら、試合と同じように練習でもする。そうすることで、試合にも練習と同じように入っていけるので、『これはある意味、フォアハンドやバックハンドの練習と同じことだな』と思ったんです。このメンタルのテクニックを駆使しながら、試合をすれば良いんだと思いました。試合に向かう前は毎回びびっていたし、毎回負けることを怖がっていた。でもそれを乗り越えるため、セルフトークしたりアファメーション使って、目の前の怯えが収まるまで自分自身に言い聞かせたり。練習をすることで、それもうまくできるようになっていきましたね」 なお、今回の合宿参加者たちに「最も印象に残った言葉」を尋ねたところ、多くの選手が挙げたのが、国枝氏によるこの「将棋の話」だった。 2人の日本テニス界の至宝が、後進たちに託した特有かつ普遍的な想い。それらは、受けとった者たちが多くの人々とラリーを打ち交わしていくことで、刻まれ、広がっていくに違いない。 <了>
文=内田暁