他産業との共創により課題解決に挑む―認知症に早めに気付き、備えられる社会へ
デジタルソリューションの開発―子会社の設立
認知症エコシステムの構築を加速させるために、2023年にエーザイの完全子会社としてデジタル事業会社Theoria technologies株式会社(本社:東京都千代田区)を設立しました。Theoria technologiesでは、エーザイが長年にわたり蓄積した膨大な治験や研究データ、知見を活用しながら、デジタルソリューションの創出を進めています。こうした事業を子会社化した背景には、創薬とデジタルのビジネスにおけるスピード感の違いもあります。創薬は数十年単位でじっくりと時間をかけて行うビジネスであるのに対し、デジタルのプロダクトは完成したらどんどん世に送り出して短いスパンで検証を重ねていく必要があります。デジタルビジネスに特化した組織体制の下で迅速にビジネスを展開していく必要があると考え、事業会社の設立に至りました。
早めに気付き、備えられる社会を目指す
認知症エコシステムにおいては、認知症の当事者さまやご家族だけではなく、健康な方、認知症高リスクの方など、全ての生活者を対象としたソリューションの開発を行っています。健康なうちから自身の健康状態や認知機能に興味を持っていただくことで、認知症になる前に気付き、備えられる社会づくりを目指しています。 認知症の6割以上を占めるといわれているアルツハイマー病は、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)を経て、長い年月をかけて少しずつ進行していきますが、早めに対処することで予防や治療の選択肢を増やせる可能性があります。しかし、そうした兆候に気付くことは簡単ではありません。その背景には、そもそも認知症がどのような症状・経過を経て進行していく病気なのかという理解が世間に浸透していないことも要因としてあると考えています。「MCI」という名称自体を知らない方も多く、エーザイの調査ではMCIの認知率は12%*と低いことが分かっています。こうしたことから、私たちには認知症やMCIについて正しい情報を発信していく使命があると感じています。 世の中にはさまざまな情報があふれかえっており、その中には正しい情報もあれば、誤った情報も多々あります。どの情報に行き着くかによって、人生が左右されてしまうのは非常に大きなリスクとなります。人々が予防や治療の効果をきちんと享受できるよう、正しい情報発信に努めていくと同時に、認知機能をセルフチェックできる「のうKNOW®」(非医療機器)というツールの開発・提供も行っています。これからも全ての方により充実した選択肢を提供できるよう、認知症エコシステムの構築を加速していきたいと思います。 *インターネットによるアンケート調査(対象者:60~70歳代の全国男女、サンプル数:20000ss、実施時期:2024年2月)
メディカルノート