他産業との共創により課題解決に挑む―認知症に早めに気付き、備えられる社会へ
連携を強化している産業・企業
2024年現在、10を超える産業および20を超える企業と認知症エコシステムの構築を目的とした連携をスタートしています。認知症には解決すべきさまざまな問題が取り巻いていますが、現在私たちが連携を強化しているのが、「介護離職」「独居・孤立」「財産トラブル」の3つの社会問題に関連する業界です。これらの問題がもたらす日本の経済的損失規模は非常に大きく、たとえばご家族の介護離職等による経済損失額は、9兆2000億円*に上ると試算されています。これは脳卒中やがんによる労働損失額と比べて大きな額となっています。45~49歳の約18%、50~54歳の約38%、55~59歳の約56%、60歳以上の約60%**がビジネスケアラー(仕事をしながら家族の介護に従事する人)もしくは切迫予備軍であると推計されており、日本における喫緊の課題と言えるでしょう。 もちろん経済的なインパクトだけで、社会課題の大きさが測れるわけではありません。ただ、認知症がほかの病気と比べて大きく異なるのは、医療機関での治療よりも日常生活におけるケアやサポートが大部分を占める病気であるという点です。そうした観点からも、社会全体の課題としてしっかりと向き合っていくべきだと考えています。なお、連携可能性のある業界や企業としては主に以下を想定しています。 財産トラブル……金融会社、保険会社、証券会社、不動産関連会社など 介護離職……PHR(パーソナルヘルスレコード)データの管理会社、健診センター、人材サービス会社、各企業の人事部など 独居・孤立……小売関連会社、宅食サービス会社、宅配会社、住宅メーカー、インフラ会社、警備会社など 各産業・企業との連携は、各社のサービスや製品価値の向上にもつながりますし、そこからより良い新たなソリューションの創出につながるという好循環が生まれると考えています。認知症にかかわる課題は実に多様であることから、さまざまな産業・企業と連携できる可能性があります。私たちエーザイからもお声がけをさせていただいていますが、異業種・異分野の企業の皆さまからのお声がけも期待しています。 *経済産業省における介護分野の取組について(2024年3月 経済産業省 ヘルスケア産業課)より **株式会社リクシス「ビジネスケアラー最新実態調査 2022.7月版」より