「パリ・オペラ座『白鳥の湖』IMAX」バレエ鑑賞歴20年の記者がドはまり〝最高の体験〟「オペラ座の舞台上にいる気分」
スクリーンに映し出された〝白鳥〟の姿は、見たこともない美しさに満ちあふれていた。バレエは生の舞台を鑑賞するからこそ、その魅力に触れることができる。バレエを見始めて20年以上、ずっとそう思ってきた。日々の鍛錬で作り上げられたダンサーの肉体から生まれる美しい踊りや息づかい、音楽を奏でるオーケストラと踊りの一体感、華やかな衣装や舞台装置、詰めかけた観客の「思い切り楽しむぞ」という高揚感――。どれか一つでも欠けてしまったら、決して味わうことができない感動がある。 【写真】白鳥たちの群舞 自分も踊っているような感覚に陥る「パリ・オペラ座『白鳥の湖』IMAX」の一場面 でも、IMAX認証カメラで収録された「パリ・オペラ座『白鳥の湖』IMAX」は美しい世界をより美しく提示し、「こんなアングルで見てみたかった」という望みをかなえてくれた。スクリーン越しだけど、「ブラボー」と拍手を送りたいくらいだ。
白鳥の一員になって踊っている感覚
パリ・オペラ座バレエは350年以上の歴史を誇り、その起源はルイ14世の時代にさかのぼる。「エトワール」(フランス語で星の意味)と呼ばれる15人ほどの最高位のダンサーを頂点に、約150人のダンサーが所属。古典の名作から現代の振付家による最新作まで、バラエティーに富んだラインアップで多くの観客を魅了し続けている。 今作がうたうのはIMAXならではの没入感。カメラはダンサーに肉薄し、時には群舞の中へ入り込んでいく。見ている側は劇場の最前列どころか舞台上にいるような、さらに言えば自分も踊っているような感覚に陥る。まったく踊れない私も、白鳥たちの一員になった気分だ。
1877年初演、現代へ
古典バレエの傑作「白鳥の湖」は、1877年にモスクワのボリショイ劇場で初演された。このときは残念ながら評価されなかったものの、振付家のマリウス・プティパとレフ・イワノフが改訂し、95年、サンクトペテルブルクで上演されて人気に。チャイコフスキーの叙情豊かな音楽と共に、現代に踊り継がれてきた。 プティパ―イワノフ版の誕生後も、数々の振付家が改訂版を発表している。その多くは悪魔ロットバルトの呪いによって白鳥の姿に変えられたオデットと、彼女を救おうとするジークフリート王子を軸に物語が進む。二人は真実の愛によって呪いを解こうとするが、ジークフリートがロットバルトの娘で黒鳥のオディールに翻弄(ほんろう)されて――という展開が一般的。悲しい結末もあればハッピーエンドもあるけれど、私の一番のお気に入りは今作でも踊られているルドルフ・ヌレエフ版だ。