デビュー15周年・朝井リョウ「直木賞を受賞した後に就職したわけではなく…」もはや若手作家ではない35歳がめざす「わけわかんない人」
夢は「なにしても驚かれない人」
――今年デビュー15周年ですが、今年の抱負や今後の展望があればお聞かせください。 とりあえず『生殖記』の次に準備している長編小説をちゃんと完成させて、デビュー15周年に合わせて世の中に出すことを目下の課題にしています。 大きな目標でいうと、「わけわかんない人」になりたいですね。 ――朝井さんのめざす「わけわかんない人」って、いったいどんな人なんですか!? たまに文学賞のパーティーに行くと、“権威”側の文脈に呑み込まれることなく、でも年齢もキャリアも重ねている、という人がいらっしゃるんですよ。例えば、デビューしてすぐのころ、たくさんの人がひしめき合うパーティー会場で志茂田景樹さんを見つけたときは、志茂田さんだけ文学の世界のしがらみの外側にいるような、物差しが人と違う感じがあって、とても輝いて見えました。 キャリアは重ねていて、存在感もあって、でも威圧感はない。そういう人、素敵ですよね。 ただ、年齢重ねていくにつれ気を抜くと“権威”側に呑み込まれていくことがあると思うんです。それに、何か人を巻き込んで行動を起こしたいときには、“権威”側での立ち位置も大事だったりする。 そう考えると、“権威”とうまく共存しつつ、「なにしても驚かれない人」になるのが夢です。私がいきなりどんな行動に出ても、まああの人はそういう人だから、と皆がジャッジを諦めるような人になるのが夢ですね。 取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部
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