100年先のブランドづくりを支えるのは「愛し、愛される」という意識。 味の素 がめざす、消費者との理想のコミュニケーション
「愛し、愛される」にはどうしたらいいか
さまざまな顧客接点からデータを収集・分析することでロイヤリティの高い消費者をピックアップし、ファン作りに活かしていくという点で意思統一はできていたが、MDCにも課題はあったという。3つの事業部間で「めざすマーケティング」のイメージやKPIに違いがあり、「足並みを揃えることができていなかった」と向井氏は打ち明けた。 そうした状況を打開するためにも、同氏は「『愛し、愛される』にはどうしたらいいかという意識を、まずは考えることが大事だった」と振り返る。たとえば、データを活用してロイヤリティの高そうな消費者にピンポイントで届けようとしても、消費者からするとそれは一方的な話でしかない。 「だからこそ、『好きだと言ってほしい』『なぜ分かってくれないのか』『この人は私たちのことを理解していない』などと考えるのではなく、まずは自分が消費者のことを好きなるところから始めるべきだ」と、向井氏は言う。そうした意識を大事にしようと、日頃からMDCのメンバーに伝えているようだ。
まるで恋人のように考え抜くこと
また、「ファン作り」というキーワードも向井氏は大事にしているという。「ターゲティングして売りを作るではなく、好きになってもらってそれで売れる。この順番を間違えないことがすごく大事だ」と、同氏は強調する。 そうした意識は、消費者だけでなく、会社の仲間、エージェンシー、媒体社、デザイナー、関わりのある会社の社員など、直接の関係者に加えて、その家族、友人まで広く向けているようだ。「彼らは何が好きなのか、どうやったら彼らに好かれるのか、まるで恋人のように考えていく。そうして考え抜いた『好き』を、データのなかからもう一度探していく。こうした順番で考えることが、味の素が求めるマーケティングには必要だ」と向井氏は力説し、こう続ける。 「いま我々が行おうとしているのは、より消費者と繋がっていこうとすること。だからこそ、本当に心のなかから、まるで恋人のように考えなくてはいけない。その気持ちを忘れると、消費者から『裏切られた』と思われるようなことを、うっかりやってしまうことすらありえる」。