金星探査機「あかつき」の観測成果 JAXA会見(全文3)スーパーローテーションとは反対方向
世界初の情報がたくさん得られた
これは3つのパネルを示しているんですけれども、3つは出射角が違うことを示しています。一番下が30度、一番上が60度。よりこちらのほうが地平線、「あかつき」が地平線に沈みかけていて、結果雲の高さが高い。見ていただくと太陽の位置は当然どの高度も同じなんですけど、赤いしま、青いしまがちょっとずつずれている様子が見えるかなと思います。このように、ちょっと斜めに寝ているという構造から、この波がどんな影響を大気に及ぼしているか想像することができました。具体的には確かに半日潮汐、熱潮汐が大気を加速しているということが分かりました。 ここまでが私の解析で、ここからは今村先生のところの学生さんが行なった解析による、ある意味世界初の情報がたくさん得られたということをちょっとお話しさせていただきたいと思います。駆け足で恐れ入りますが、先ほどまでは温度に着目をした解析でした。ここからはLIRを使って風を出してみたという研究になります。 LIRの元画像というのは、温度を撮った画像なんですけれども、この中にも実は少し雲の模様が含まれております。ただ残念ながら、LIRの性能的に1枚の画像、例えばこのように横軸、経度、縦軸、緯度という地図に展開してみると、どちらかという雲の模様というよりは、何かごま塩のようなLIRが持っているノイズが目立つような画像が得られていました。われわれ研究者はこの画像に困ったというふうに思って長年過ごしていたんですけれども、学生さんの福谷くんがたくさん画像を用意して、うまく平均をすればノイズが減るのではないかと。言ってみればすごくシンプルなんですけれども、誰もやっていなかったという操作を実際に試してくれました。 本当にたくさんの画像を平均すると、一番右の図のように確かにノイズが減少して、雲の筋1つ1つが見えるようになりました。これが1つ学生さんの新しい発見で、研究者はなかなか、絵を見ることしか頭にないので、こういった新しい発想、柔軟な発想ができずに学生さんに助けられたなと思っているところです。