金星探査機「あかつき」の観測成果 JAXA会見(全文3)スーパーローテーションとは反対方向
熱潮汐波が地面を蹴って大気を加速
もう少しイメージを持っていただくためにこんな絵も用意してみました。先ほど述べた熱潮汐波は、太陽と一緒に動いていきます。ですので、太陽のお昼とか夜とか移動していくのに、同じ周期で、熱潮汐波の構造もぐるぐる回っていきます。こういった意味で、金星の地面にとってみると熱潮汐波もちょこっとずつ動いていって、結果少しずつ、地面を熱潮汐波が蹴って大気が加速されていきます。 面白いことに、確かにスーパーローテーションは右から左、東から西に吹いているんですけれども、熱潮汐波は西から東に移動していくと。そういう反対向きの構造が得られているんだということが分かりました。これはある意味理論で予想されたものと非常によく合うものだったんですけれども、こういった形が得られたというのは今回「あかつき」の成果が世界で初めてとなります。 さらに先ほどお見せした絵を、さらに24時間で1回変化する波と、半日で、12時間で一度変化する波に、少し成分を分離してみました。それで何が分かるかというと、1日で起こる変化と半日で起こる変化の違いというものが見えるようになります。特に1日で起こる変化というのは、赤道はあまり大きな変動を持たないんですけれども、一方で半日で起こる変化というのは、赤道から中緯度まで縦に伸びたような構造が得られていることが分かりました。 これは気象力学的には非常に重要な情報を持っておりまして、この両者の違いから、この2つ、1日で、24時間に1つの波を持つ構造が大気に及ぼす力と、半日の波が大気に及ぼす力が少し違うんだろうと、そういうような考察にもつながっております。 最後になりますが、ちょっと解析の注意点で述べた、出射角がだんだん大きくなると、「あかつき」がだんだん地平線に近づいてくると雲の高さが高くなるとお話ししました。これを逆手に取ると、この出射角をちょこっとずつ変えていくと、LIRっていう2次元のカメラを使って高さ方向の情報を少し取り出すことができるようになります。ちょっとうまく説明できているかあれですけれども、例えば出射角60度というものを取ると、高度はおよそ69キロ。出射角45度という角度を取ると高度はおよそ67.5キロと。高度1キロぐらい違った場所の温度の情報が得られるようになります。こういったLIRっていうただのカメラなんだけれど、高さのことも分かるという特性を生かして少し調査をしてみた結果がこちらになります。