結果としてのSDGs。「えんがお」が取り組む持続可能な福祉
結果としてのSDGs
濱野さんは、こうしたあり方こそがまさにSDGs的な事業のあり方ではないかという。 「少子高齢化が進んでいるいま、『支援する』という考え方だけでは厳しいんです。絶対に支援をする人手が足りなくなりますから。でも、支援される人が、時にはだれかを支援することもできるはず。そのようにみんながお互いに支え合えば、そこには持続可能性が生まれると思います。それがこれからの時代のヒントで、ごちゃ混ぜの空間で、お互いがお互いを支えることが大事だと思います。 あるおばあちゃんに料理や掃除などをしてもらって、その人にお給料を出しているんです。その給料を何に使うかといったら、地域サロンにくる子どもにお菓子を買ったり、僕にビールを買ったりしてくれるんですよ(笑)その結果、ぼくはビールを飲んで頑張って仕事ができて、またおばあちゃんに給料を渡すことができる。これが本当のSDGsじゃないかと、半分本気で思ってます(笑)。 僕らは空き家でできること、あるいは高齢者や子ども、障がいのある方たちのできることを割り出して社会の資源にすることで、結果的にローコストで無理なく色々な支援ができるから、そこに持続可能性が生まれる。必要なことを無理なくやっていった結果、それがたまたまSDGs的になるんじゃないでしょうか」
SDGsという言葉が叫ばれて久しい。耳触りがいい言葉だけに、中身を伴わない"SDGs的"な試みも増える中、「えんがお」は地域の人のニーズを少しずつ、そして現実的にかなえる形で、まさに持続可能な形で「誰も取り残さない」地域づくりを行っている。そこには「結果としてのSDGs」の姿がある。 濱野さんは大田原市で行っている「えんがお」のノウハウを生かして、他の地域団体に伝えていく活動も展開していきたいという。それぞれの地域で、次なる「えんがお」は生まれるのか。この取り組みが少しずつ広がっていけば、本当の意味でのSDGsが日本中に広がるのかもしれない。
取材・執筆 : 谷頭和希 取材・撮影・編集 : 友光だんご(Huuuu)