結果としてのSDGs。「えんがお」が取り組む持続可能な福祉
「えんがお」を始めるときも、苦労は絶えなかったと濱野さんは言う。 「栃木の大田原は伝統的な城下町で、街としては排他的な面もあります。だから最初は苦労しました。今でも、ぼくたちの活動を認めてくれていない人たちもいると思います。 ただ、僕たちが意識しているのは『積極的反対を作らないこと』。自分たちについても、大田原において『味方ではあるが身内ではない』という言い方をしています。完全に地域に認められるのはそれはそれで良くない気がしていて、完全に地域に入り込んでしまうと、外部の人間が入る意味が無くなってしまうと思うんです」 「適度な距離感を持っているからこそ、地域の人々が気付くことのなかった、その場所の良さに気付くことができると思うんです。例えば、大田原であれば、いい空き家がたくさんありました。でも、地元の人はその空き家にあまり価値を感じていなかった。外部から来た僕たちだからこそ、大田原の空き家に魅力を感じて、さまざまな場作りができている」
支援する人と支援される人を分けないこと
「みんなの家」もまた、元々は20年使われていなかった酒屋の空き家を改修したものだ。
「ここは、人の出入りがしやすい物件で、改修もほとんど手をかけずに使えています。手を加えていないのはもちろんコストの問題もありますが、手を加えすぎると、来る人が『お客さん』みたいになってしまって良くないんです。 補助金が下りたからといってきれいな建築だけ作って、ほとんど人が来ていないような場所も、他の地域で見かけることがあります。ある程度の『ダサさ』や『乱雑さ』がないと、本当に居心地のいい場所は作れないのでは、と思っています」
「来た人を『お客さんにしない』ということと同じですが、『えんがお』では、『支援する人』と『支援される人』をあえて分けないように意識しています。 例えば、地域サロンにやってくるおばあちゃんは、足腰が弱くて支援が必要だけど、料理は得意だったりする。であれば、そのおばあちゃんには地域食堂で料理を作ってもらう。あるいは、勉強スペースで勉強する中高生に学童保育の子どもたちと遊ぶのを手伝ってもらう。『えんがお』という場所に集まってきた人が持っている特徴を活かして、それぞれができることを出し合い、協力しながら場を作っています」