【1月に注意してほしい感染症!】新型コロナ変異株XEC流行に注意 医師医師「新型コロナがインフルエンザと同等など社会の一部からの声に惑わされるべきではない」 インフルエンザ冬休み明けの動向要注意
2025年1月に注意してほしい感染症について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。1月は、昨年末から今月にかけて、帰省や旅行等で、人流が変わる時期です。また、冬休み明けの学校等の再開で、インフルエンザが再び流行する可能性もあります。流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。 【2025年】1月に注意してほしい感染症!新型コロナ変異株XEC流行に注意 医師「社会の一部からの声に惑わされるべきではない」 インフルエンザ冬休み明けの動向要注意 ◆【No.1】新型コロナウイルス感染症 2024年第45週(11/11-17)を境に、全国的に患者報告数が、増加しています。2024年12月末時点の状況になりますが、これまでの流行とは違い、西日本での流行は比較的落ち着いています。しかし、北海道・東北地方・中部地方では、定点報告数が高くなっており、注意が必要です。これまでのデータでは、定点で4~5を超えると、患者報告数は、その後、急激に増加します。私の勤務先では、大阪府の定点データ5.0を基準に、その値を超えて、増加が見込まれる場合は、病床数の確認など、受け入れの準備を整えています。特に、入院前の患者さんの検査の徹底は肝要で、ここで手を緩めると、院内感染が広がる可能性が高くなります。どのエリアでも当てはまるものでは無いですが、医療関係者の方は、コロナ患者の急激な増加を想定した対策が必要と考えています。1月は、新型コロナウイルス感染症の患者報告数は、増加すると予測しています。新型コロナワクチン接種者が減っていることや新型の変異株XECの検出割合が増加していることもあり、冬の流行は、ある程度の規模になるでしょう。勤務先の病院に入院する患者さんの中には、肺炎を発症し、人工呼吸が必要なケースもあります。症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。合併症の恐れがある方は、特に注意が必要です。ワクチンを接種した後も、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。中には、命に関わるケースもあります。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。 ◆【No.2】インフルエンザ インフルエンザの患者報告数は、第48週(11/25-12/1)に4.86。翌49週(12/2-8)には、9.03と大きく増加しました。インフルエンザ定点で4を超えた場合は、その後、急激に患者報告数が増加するケースが多いですが、今回も、そのような傾向になっています。年末の12月25日辺りから、小学校等が冬休みに入ります。インフルエンザは、子どもの間で大きく流行するため、冬休み期間中は、患者報告数が一時的に減少するでしょう。しかし、冬休み明けに、患者報告数が、どのような動向をみせるのか注意深く見ています。インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年、世界中で流行がみられています。日本でのインフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え3月頃まで続きます。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染で、他に接触感染もあるといわれています。飛沫感染対策として、咳エチケットや接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト-ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。 ◆【No.3】マイコプラズマ肺炎 2024年は、マイコプラズマ肺炎の患者報告数が過去最多を更新しました。第46週(11/11-17)を境に減少していますが、患者報告数は、依然、高水準にあります。マイコプラズマ肺炎は、別名、オリンピック病と呼ばれ、4年に一度、オリンピックの年に流行すると言われています。しかし、過去の流行状況をみると、2015年から2016年にかけては、年を跨いで流行が続いています。高水準のまま、2025年を迎えることになるため、年明けの動向に注視が必要です。マイコプラズマ肺炎は、入院が必要になるケースもあり、注意が必要です。私が、直接、診察した患者さんは、挿管が必要になるほど重症化し、長引く咳が辛そうでした。小児科では、迅速検査キットを使用し検査ができる場合も多いです。しかし、大人の場合は、咳・発熱症状を訴えて、クリニックで受診しても、原因不明で大きな病院に紹介され、そこでマイコプラズマ肺炎と判明するケースもあります。身の回りで、マイコプラズマ肺炎が流行していることを知っておくことが大切です。マイコプラズマ肺炎とは、肺炎マイコプラズマを病原体とする呼吸器感染症です。飛沫感染による経気道感染や接触感染によって伝播すると言われています。感染には濃厚接触が必要と考えられており、保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられますが、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くはありません。潜伏期間は、2~3週間とインフルエンザやRSウイルス感染症等の他の小児を中心に大きく流行する呼吸器疾患と比べて長いです。初期症状として、発熱、全身倦怠、頭痛などが現れた後、特徴的な症状である咳が出現します。初発症状発現後3~5日から始まることが多く、乾いた咳が経過に従って徐々に増強し、解熱後も長期にわたって(3~4週間)持続します。抗菌薬投与による原因療法が基本ですが、「肺炎マイコプラズマ」は細胞壁を持たないために、β-ラクタム系抗菌薬であるペニシリン系やセファロスポリン系の抗生物質には感受性はありません。蛋白合成阻害薬であるマクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)が第1選択薬とされてきましたが、以前よりマクロライド系抗菌薬に耐性を有する耐性株が存在することが明らかとなっています。近年その耐性株の割合が増加しつつあるとの指摘もあります。最初に処方された薬を服用しても症状に改善がみられない場合は、もう一度医療機関を受診していただくことをお勧めします。 ◆【No.4】伝染性紅斑(りんご病) 伝染性紅斑が、関東地方を中心に流行の兆しを見せています。全国的な流行には至っていませんが、東京・神奈川・千葉・埼玉など、首都圏で患者数が増加しています。伝染性紅斑は新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以来、患者の発生は、ほとんどありませんでしたが、ここに来て各地で患者の発生が見られるようになりました。これから1年ほどかけて、ゆっくりと流行していくと予測されます。後述しますが、妊婦さんにとっては、危険性のある感染症なので、体調不良を感じた場合は近づかないことや、幼稚園・保育園などで、流行している場合は、施設への立ち入りを制限するなど、周囲の方も配慮が必要です。伝染性紅斑は、4~5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。感染後10~20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。 ◆感染症に詳しい医師は… 大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「1月に最も注意してほしい感染症は、新型コロナウイルス感染症を挙げました。ワクチンを接種する方も、減っていますし、新たな変異株XECの検出割合が増していることが理由です。新型コロナウイルス感染症について、死亡診断書に基づいた、死亡例・関連死の合計は、2022年は約6万人。2023年は、約5万人でした。このように死亡例の多い感染症は、国内で他にありません。2023年5月から、『5類感染症』に移行しましたが、疾患の医学的インパクトが低下した訳ではありません。私は、臨床医として、新型コロナ流行初期から、患者を診察・治療にあたってきました。インフルエンザと同等、あるいは、インフルエンザよりもインパクトが低いかのような、社会の一部からの認識に惑わされるべきではありません。高齢者の死亡率・重症化率は高いままであり、後遺症発生率は、約7%と他の感染症とは、明らかに違う認識を持つ必要があります。皆さん、じゅうぶんに気を付けてください」としています。 監修・取材 大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏