「前2輪」というユニークな形状で安定性を実現したRaptorの“移動手段”としての可能性
電動で、スペック上は40km/hぐらいの速度が出る。前2輪の3輪車で、ちゃんとシートもあるので、とても安心して乗ることができる。もちろん、急制動も可能。前2輪なので、路面が悪くても、滑りやすくてもかなり安心してブレーキをかけることができる。 Raptorのユニークなところは、下部の動力ユニットと、上部ボディ、操作系を切り離して交換できるということだ。 上部はスポーティなボディや、カジュアルで乗りやすいボディに切り替えることができる。ライディングポジションや重心位置が変わると、必然操縦性も変わる。誰にでも扱いやすい操作性にも、スポーティな操作性にもできる。
それだけではない。将来的には自動運転ユニットを付けて、この上に荷物を載せて走ったりすることもできる計画だ。 たとえば、人が運転するRaptorに、貨物を載せた数台のRaptorが自動運転でついていく……というような運用も可能だろう。 さらに、上部に4足歩行ロボットや、人型ロボットの上半身を載せて運用することもできる。災害時などに、Raptorで高速移動して、悪路になったら4足歩行ロボットだけが分離して移動、悪路の先を調査する……というようなことも可能になるだろう。
そんな、さまざまな未来のプランを含めてRaptorは開発されている。 ■「マネタイズはどうするの?」という愚かな質問 しかし、アルミ削り出しのシャシー、前輪のステア機構、カーボンファイバーのボディは非常に高価そうだ。量産しても軽く100万円は超えるだろう。 「マネタイズはどうするんですか? これ、数は売れませんよね」思わず、そんな質問が声に出た。 すると、RDSの杉原行里(あんり)社長は、こう言った。
「そんなの後まわしです。まずは、理想的なモビリティを作りたいのです」 視野の狭い質問を恥じた。たしかに、ダイムラー・ベンツだって、エンツォ・フェラーリだって、マネタイズだけを考えて自動車を作ったわけではないだろう。まずは理想のモビリティありきだったに違いない(本田宗一郎はマネタイズを考えていたかもしれないが)。 日本のベンチャー企業のプレゼンテーションを見ていると、出資者であるVCの方が必ず伝家の宝刀のように「マネタイズはどうするんですか?」と聞いてくる。金を握っている自分のほうがエライと思っている。ビジネスである限りどうやって利益を上げるかを考えるのは大切だが、最初に「マネタイズ」を考えるとスケールの小さなビジネスにしかならない。まずは正しいプロダクトなのか? 多くの人を幸せにできるのか? を追及したほうが、遠い目標に到達できることもあるのではないか?