虎のソナタ 「選手の誰よりも『ビシーッ』とイイ音」 ビヤ樽絶賛の片山ブルペンコーチ捕球音
米大リーグのワールドシリーズと日本シリーズがいっぺんに楽しめた日々も去り、ことし最後の3連休まで終わってしまって、一気に寂しい秋がやってきた。プロ野球界は5日からいよいよフリーエージェント(FA)権行使の手続き期間に入る。阪神では今季、新たに大山悠輔、坂本誠志郎、糸原健斗、原口文仁の4選手が権利を取得しただけに、これ以上寂しい気持ちにさせるのは勘弁してほしい…! ソワソワする秋に突入だ。 【写真】NHK「サラメシ」の取材を受けるビヤ樽こと三木建次 引き続き「鍛錬の秋」になっている高知・安芸市では、ベテラン虎番のビヤ樽こと三木建次が、季節感などまったくないようすで、大粒の汗を垂らしながらブルペン脇に立ち尽くしていた。 「きょうは気温26度やぞ。秋ちゃう、夏や! 暑くてTシャツ一枚で取材してるんやから」 1日にキャンプインして、例年のキャンプならば4日ぐらいには休日が挟まっただろうが、今年の秋は「5勤」がベースだ。若い選手らはハツラツと鍛えているが、60歳のビヤ樽は休みが恋しくなってきた。天候もこの日のように極端だから余計にこたえる。 「序盤2日間は荒天で、ファンの人たちの傘が風にあおられて壊れていたんや。ホテルの傘を壊して弁償するのは嫌やし、あれを見て僕は傘ナシで取材することにした」 壮絶だ。果たして、編集局内でヌクヌクと座っている面々に、この叫びは届くだろうか-。 「おかげで体も、取材ノートもびしょぬれや。でも3日からは一転して『夏日』になったから、紙はシワシワになったけど、もう乾いた。ぬれたり乾いたり、僕も〝メリハリのある〟キャンプになってるわ」 すばらしい根性だ。だがそれ以上に「絶対に傘を弁償したくない」「100円ほどの安いノートでも買い直したくない」という倹約家としての意地とプライドが、ビシビシ伝わってくる。 今キャンプでのビヤ樽は投手担当。雨ニモマケズにジッとブルペンでの投球練習を見つめていて、改めて気がついたことがあったという。 「ブルペン捕手から、ブルペン担当コーチも兼任することになった片山クンの捕球音はやっぱりスゴいなぁ。選手の誰よりも『ビシーッ』とイイ音を響かせるんや。声も出ているし、熟練の技や。藤川監督が現役時代から信頼を寄せてきたワケは、ああいうところなんやろうな」