ドン ペリニヨンの新ヴィンテージがお披露目。まだ見ぬ過去、懐かしい未来の味をひも解く
スペイン・バルセロナでシャンパーニュメゾン「ドン ペリニヨン」の新しいヴィンテージが発表された。世界各地から約130名のアーティスト、クリエイター、シェフ、ソムリエが集結。グルメの最前線ともいえる、現地をリポートする。 【写真を見る】イベントの様子をチェック!
いざ、バルセロナへ
「ドン ペリニヨン」が新ヴィンテージを発表するのは、いつも決まった場所ではない。東京はもちろん、京都や尾道だったこともある。フランス・オーヴィレール村やハワイ島だったこともある。世界各地で行われてもなんら疑問が浮かばないのは、彼らがシャンパーニュの代名詞として世界中で知られているからにほかならない。 さて、今回、「ドン ペリニヨン レベレーションズ 2024」が行われた地はスペイン・バルセロナだ。取材チームは東京・羽田からドバイ経由でバルセロナ=エル・プラット空港を目指した。会場まで片道約24時間。なかなかの距離だが、「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2015」と「ドンペリニヨン ヴィンテージ 2006 プレニチュード 2」を味わえるなら、いささか程度と思えるから不思議だ。 会場となったのは、スペイン人建築家リカルド・ボフィルの代表作「ラ・ファブリカ」でセメント工場を再利用した空間である。中庭で「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2015」のソロテイスティングが行われ、その後、室内でのディナーへと移った。ペアリングを担当したのはミシュランの星付きシェフ、アルベルト・アドリアとニコ・ロミートで、「ドン ペリニヨン」の醸造最高責任者を務めるヴァンサン・シャプロンとの対話からそれぞれの料理が生み出されたそうだ。 ディナーはピアニスト、ベルトラン・シャマユによるジョン・ケージの曲の独奏からはじまった。光量が絞られた荘厳な雰囲気は、ドン ペリニヨンの新ヴィンテージを味わう集中力を高めてくれる。その道具立てがあってか実際、これまでのヴィンテージとは違って、口内で水平に広がっていくような“触感”が感じられた。 会場外のバルセロナ市内のパラオ・マルトレルでは、「プレアッサンブラージュ 2023」展も開催されていた。「TRACE(痕跡)」をコンセプトに、2023年のシャンパーニュのブドウ畑の様子やヴィンテージの誕生過程をアート作品で表現し、展示している。テイスティングとマリアージュ、そしてアートと、さまざまな角度から「ドン ペリニヨン」のシャンパーニュに触れると、いままで雲を掴むようだったヴァンサンの言葉が輪郭を帯びてきた気がする。イベントが終わり、24時間の帰り道が至福の余韻で満たされたのは言うまでもない。
編集と文・岩田桂視(GQ)