中小企業では「受取手形等」の売上比率は低下傾向 卸売業・製造業では手形取引の商慣習が根強く残る
2023年の「受取手形等」は13兆9,779億円、売上高の3.2%に相当
2023年(2022年10月期-2023年9月期)に、財務諸表に計上された手形や電子記録債権(以下、「受取手形等」)の総額は、13兆9,779億円(前期比3.2%増)だった。 2014年以降「受取手形等」は増加をたどり、ピークの2019年は15兆4,321億円に達した。しかし、コロナ禍の2020年以降は企業活動の停滞に伴い、いったん落ち込んだ。ただ、コロナ禍が落ち着いた2022年以降は再び増加に転じ、13兆円台に戻した。 2023年の受取手形売上比率(売上高に対する「受取手形等」の比率)は、3.2%(前期3.3%)で前期を0.1ポイント下回った。 過去10年間では、2014年から上昇をたどり、2017年に3.2%と初めて3%台に乗せた。これ以降は上下を繰り返し、2023年は3.29%となった。
<受取手形当座資産比率>
◇資本金別 資本金が小さい企業ほど受取手形当座資産比率が高い 資本金別の受取手形当座資産比率(当座資産に占める「受取手形等」の割合)は、2023年は資本金1億円未満が12.1%で、資本金1億円以上の7.3%を4.8ポイント上回った。手形決済は大手企業を中心に急減しているが、中小企業間の取引は依然として手形決済が多いことがわかる。 過去10年間の受取手形当座資産比率の推移をみると、資本金1億円未満は2014年の15.7%から、2023年は12.1%へ3.6ポイント低下した。一方、資本金1億円以上は2014年の6.5%から、2023年は7.3%へ0.8ポイント上昇。大企業と中小企業で対照的な推移をたどっている。 ◇産業別 卸売業が14.4%で突出、農・林・漁・鉱業は過去10年で大幅低下 産業別の受取手形当座資産比率は、2023年の最高は卸売業の14.4%だった。10産業では唯一、10%を超え、突出した。次いで、製造業が8.4%と続く。「受取手形等」は企業間取引の決済で利用されるため、卸売業や製造業などBtoB業態で比率の高さが目立った。 一方、農・林・漁・鉱業は、2014年は14.1%と卸売業に次ぐ水準だったが、その後、急速に減少し、2023年は6.4%と大きく低下した。 農・林・漁・鉱業のほか、建設業、卸売業、小売業、金融・保険業、運輸業、情報通信業では、2014年と比較して受取手形当座資産比率が低下している。