中小企業では「受取手形等」の売上比率は低下傾向 卸売業・製造業では手形取引の商慣習が根強く残る
<割引手形> 計上企業数・金額ともに減少傾向
2023年は、「割引手形」残高の計上が4,451社、残高は7,801億円(前期比10.8%減)だった。 過去10年間では、2014年期の計上は1万996社、残高は1兆7,321億円だったが、その後は減少をたどった。2020年は、コロナ禍で急激に売上高が落ち込む一方、ゼロゼロ融資などのコロナ関連支援策で手元資金に余裕が生まれたほか、手形を期日まで手持ちする企業が増加、総残高は1兆円を割り込んだ。 2023年は、2014年期の社数・総残高から、6割近く減少した。
「受取手形等」を計上した企業のうち、割引手形を決算書に計上した企業数の割合を算出した。業種別では、最高が「なめし革・同製品・毛皮製造業」の23.8%。次いで、「各種商品卸売業」が20.0%と続き、上位2業種では2割を超えた。 上位15業種のうち、製造業が11業種を占め、製造業は他の業種よりも手形割引で資金を調達し、資金繰りを維持している状況が浮き彫りとなった。
手形交換高は大幅に減少、電子記録債権金額比率は約3割まで上昇
一般社団法人全国銀行協会によれば、現金決済の増加や電子記録債権(でんさい)へのシフトなどで、2023年の約束手形の交換高は93兆4,228億円(前年比11.2%減)と、ピークの1990年(4,797兆2,906億円)から98.0%減と大幅に減少。一方で、2023年の「でんさい」は39兆7,612億円(前年比17.3%増)と大幅に上昇している。 手形交換高に対する電子記録債権発生記録請求金額の構成比を比較すると、2014年では1.4%にとどまったが、10年間で大きく上昇し、2023年には29.9%に伸びた。2013年2月に始まったでんさいは、紙の手形と異なり印紙税が必要なく、郵送や取り立てなど事務作業も軽減される。電子化することで紛失や盗難のリスクもない。登録者数の伸びが鈍化しているが、2023年12月末時点で49万1,182社へ導入が進んでいる。 政府は、紙の手形や小切手を2026年度をめどに廃止する方針で、「でんさい」やインターネットバンキングなど電子化の取り組みを加速させている。