後継者?菅原由勢の奮起弾に吼えた38歳長友佑都「あれだけみんなが喜ぶのは彼の人間性」
苦境の中でも明るさとひたむきさを失わなかった後輩の活躍に、笑みがこぼれた。日本代表DF長友佑都(FC東京)が中国・厦門で行われた17日の練習後、報道陣の取材に対応。15日のインドネシア戦(◯4-0)で途中出場からゴールを決めたDF菅原由勢(サウサンプトン)について「吼えましたね。嬉しかったのと、彼も苦しい思いをして這い上がってきたので、彼が示したものには僕自身も大きな刺激をもらいました」と嬉しそうに感慨を語った。 【写真】「全然違う」「びびるくらいに…」久保建英の9年前と現在の比較写真に反響 北中米W杯最終予選で4試合連続で出場がなかった菅原は15日、第5戦・インドネシア戦の後半17分に待望の初出場。すると同24分、MF伊東純也からのパスを受けてペナルティエリア右を切れ込み、豪快な右足シュートを突き刺した。チームにとっては4点目のダメ押し弾。それでも菅原の周りには勝ち越しゴールが決まったかのような歓喜の輪ができ、苦境に悩んでいた24歳を支えるムードがあった。 日本代表で15年以上を過ごしてきた長友にとっても、その光景は印象的だった。「それぞれ厳しい競争の中で、苦しい思いをしている選手もいるし、スタメンの選手も少しでもダメなプレーをしたら代えられてしまうという危機感の中でやっている。まず一つ、彼が苦しい状況の中で、出られない状況の中で、一つそれを乗り越えると花開くというものをみんなに示してくれた」。経験豊富な38歳はしみじみと振り返りつつ、その光景に表れた菅原のパーソナリティを称えた。 「あれだけみんなが喜ぶのは彼の人間性だと思う。彼が練習中に腐っていたり、文句ばかり言ってたとしたら誰も寄ってこない。前向きにポジティブにやっていることが人の心に響いて、ああいうふうに自然と人が集まってくる。それを彼が体現したんじゃないかなと思います」(長友) また菅原にとっても、長友は日々大きな刺激を受けている相手だ。同じ日本代表のサイドバックを長年にわたって担ってきた偉大な存在に対し、インドネシア戦後には「あの年齢で、あれだけの経験がありながらも本人はベンチに入れないという悔しい思いを感じながらも、チームの先頭に立って引っ張ってくれている。彼の姿勢には尊敬しかない」とあらためて敬意を口にしていた。 長友はそうした14歳下の後輩に刺激を与えていることについて「僕は魂を分け与えてるんで。言葉も必要ないし、自分の姿を見てもらえれば自ずと魂の中に熱いものが込み上げてくるんだというのを体現したいなと思って戦っている。“日本のソウル”であり続けたいなと思います」と力説。菅原を「長友の後継者」に挙げる報道陣の質問に、ユーモアを交えながら信頼を示した。 「なかなか僕の後継者っていうのは簡単ではないですよ。こんなにぶっ飛んだクセのあるやつはなかなかいないんで。やっとクセがあるって気づいてきたんですけどね、今になって。自分では普通だと思ってたんで(笑)。だからなかなか僕の後継になるのは難しいと思うけど、違う体現の仕方、伝え方、表現の仕方はあるし、そこで彼には似たものを感じますね」(長友) 最終予選でベンチ外が続く長友自身も菅原と同様、ピッチに立つことを目指して日々を過ごしている。この日も「必ずチャンスをモノにできる自信がある。最終的にしっかりと掴むものは掴んできたんで、今までもたくさん苦しいことはあったし、もっともっと厳しい状況はあった。ただ大事な時、そこに長友がいるというところで自信を持っている」と力強く語り、出場への意欲を改めて示した。 もっとも、その思いを持ちながらも自身の役割を全うし、充実した戦いを続けるチームを支える振る舞いは欠かさない。北中米W杯最終予選を19得点1失点の4勝1分と堂々の戦いを続ける森保ジャパンだが、そのチームの軸には紛れもなく、経験豊富な38歳の活力が宿っている。 「僕は今年の3月からで、その前は入っていなかったのでわからないけど、確実に積み上がっているなと思います。3月はアジア杯に負けて、みんな自信をなくしたような感じだったけど、いまは大勝している中でも危機感を持ってやっているという成果がしっかりと結果に表れている。こんなに簡単じゃなかったですよ。アウェーでは本当に難しい試合だったんで。いまは個のクオリティーと、戦術と、一人一人の危機感の強さが結果にしっかりと表れていると思います」(長友) その熱い姿勢はこの先も変えるつもりはない。19日の中国戦に向けて「満足せずに次もしっかりと叩きたいなと思います」と語った長友は2008年に中国で戦った北京五輪を回顧しつつ、「苦しい思いをした場所だということで良い結果で晴らしたいですよね。苦い思い出というのはしっかりと晴らせるようにしたい」と力強く先を見据えた。